韓国が日本取引所の方針を丸パクリして「日本みたいに株価を上げよう」と試みています。
「PBRが1.0を割っている」とか論外です
付け焼き刃は無理だってば――なのですが、韓国メディア『毎日経済』がその証拠となるような記事を出しています。タイトルから振るっていて――「『PBRにだまされた』……30%跳ね上がったeマート、2カ月ぶりに所定の位置に」という記事です。
「PBRにだまされた」が傑作です。
株式の取引をされる方にとっては常識ですが、PBRというのは割安株を見分けるときに使われる基本的な指標です。
4年前ぐらいに大賢人エミン・ユルマズさんが「日本株のPBRは低すぎる。1.0を割っている企業がたくさんある」と指摘していらっしゃいました。
2020年にユルマズさんは以下のように書いています。
(前略)
今は市場にあふれるマネーの行き場が日本株ぐらいしかない。5年前なら中国も選択肢だったが、アリババ集団傘下の金融会社アント・グループの新規株式公開が直前に金融当局により延期される事態に、世界の投資家は大きく失望している。※原稿初出は2020年12月22日
⇒参照・引用元:『エコノミスト Online』「「5年前なら中国も選択肢だったが……』エミン・ユルマズ氏が語る『日本株は今こそ買い』の理由」
全くユルマズさんの指摘どおりに状況は進行しました。「中国株はもう駄目だろ」と投資家に認識され、日本市場に資金が流入。日本株式のPBRは大きく上昇しました。
そもそもPBRが1.0なんて話は論外です。
なぜなら、株式の時価総額がその株式の発行体の純資産とイコールです。なんのために企業活動をしてるんだ?という話です。
1.0を割ると「時価総額が企業の純資産よりも低い」状態ですから、「上場しているよりも、すぐ会社を解散して資産を株主で分けたほうがいい」となります。
日本ではきちんと事業を行っている企業なのに、「株価が安すぎるだろう!」という状態だったのです。
ところが、韓国は日本よりさらに悪く――Money1でもご紹介したことがありますが「このPBR平均が0.9ってなんなん?」でした。
まさしく、企業を解散した方がいいんじゃないのか。無理に頑張らないで――だったのです。
日本のマネをしても株価が上がるわけじゃない
、
今回の本題に戻ります。
韓国メディア『毎日経済』が記事で書いているのは――、PBRが異常に低い『eマート』株に資金を投入した投資家は大きな損失を被った。韓国政府が発表した「企業バリューアップ支援案」を信じたのに――という話です。
「企業バリューアップ支援案」というのは、以下の記事でもご紹介しましたが、日本の「資本コストと株価を意識した経営措置」を丸パクリしたものです。
日本の「資本コストと株価を意識した経営措置」も、「株価を上げようよ」という話でしたが、その後日本株はバブル時の最高値を更新し快進撃となりました。
しかし、韓国株の方は上がりません。そこで「日本がうまくいったんだからマネすりゃ上がるだろう」と考え、2024年02月26日、急遽「支援策」なるものを発表したのです。
――で、『eマート』株式に資金を投入した投資家は失敗した――と。以下に『毎日経済』の書きようを引用してみます。
国内オフライン流通1位のイーマートの株価が再び過去最低価格に向かっている。
一時、同社の株価を30%ほど上昇させたバリューアッププログラムの効果はわずか1カ月ほどしか続かなかった。
結局、株価純資産倍率(PBR)0.2倍という数字だけを見て入った投資家だけが大きな損失を被ることになった。
(後略)
『毎日経済』の記事では、政府の支援策の効果は1カ月しか続かず、株価は過去最低に向かっていると書いています。まるで政府の策に効果があったような書き方です。
しかし、そうではありません。
以下の『eマート』のチャートをご覧ください(チャートは『Investing.com』より引用)。
韓国政府が日本のまねをして「企業バリューアップ支援案」を発表したのが2024年02月26日です。上掲のとおり、そもそも支援策公表の前から、株価は下落トレンドでした。
『eマート』のチャートを見る限り、日本をパクった支援策が奏功したようには見えません。
そもそも『eマート』にはPBRが低くなるファンダメンタルズがあったということに他なりません。また、政府がいかに支援策を公表しようが、それは「PBRが低い企業の株価が(全部)上がりますよ」という話ではない――ということです。
「そうか、PBRが低かった企業の株価が上がるんだな」と考えて『eマート』に資金を投じるなど、付け焼き刃で浅薄な考えとしていえません。日本のマネをしてもうまくいくとは限らないのです。
(柏ケミカル@dcp)