Money1では何度もご紹介してきましたが、韓国の国民年金のシステムは「低負担・低福祉」です。少ししか保険料を徴収しない代わりに、少ししかもらえません。
国の経済が右肩上がりのときはそれでも良かったのですが、システムをそのままにしたのが大問題となっています。
韓国の年金改革はもう手遅れの可能性大
すでに出生数と死亡数がデッドクロスし、合計特殊出生率が世界最悪の「0.72人」ですので、急速に人口が減少していくフェーズに入っています。
もはや年金システムがもたないことは誰の目にも明らかです。
ただでさえ韓国は、老齢者の貧困率が高い国です。これからリタイアする人が増加し、若い世代が急速に人口が減ります。国民年金制度が破綻すると、増加した老齢者がさらにビンボになって暮らせなくなると……これは社会不安が醸成されることすら予測できます。
ですので、韓国政府としては国民年金のシステムを何がなんでも維持しなければなりません。
しかし、Money1でもご紹介してきたとおり、韓国の歴代政権は国民年金改革に対して根本的な改革を実行しませんでした。なぜかというと、年金の保険料率を上げることにつながり、国民から文句が出るからです。
アンポンタンな前文在寅政権では、「2040年以降には合計特殊出生率が1.21人まで回復する」という「誰が言ったのそれ」な予測まで出して「韓国の年金システムは大丈夫だ」と言い張りました。
「バカなんじゃないの」という話ですが、「ウソをついてその場を凌げればいい」という実に朝鮮半島の人らしい態度といえます。
尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領は「これに手を付けないといけない」としていたのですが、総選挙で与党『国民の力』が負けたこともあり、改革は手つかずで残ったママです。
しかし、韓国にの憂国の士はいるもので、警鐘を鳴らし続けています。
韓国のばか過ぎる「年金改革」プラン
韓国メディア『東亜日報』がユン・ソクミョン『韓国保健社会研究院』名誉研究委員に取材した記事を出しています。
このユンさんは、Money1でもたびたび紹介してきた方。2024年には年金改革研究27年目で、韓国における年金システム研究の第一人者と呼ぶべき研究者です。ユンさんの意見は信用できます。
『東亜日報』の同記事では、冒頭に大変面白い記述があります。以下に引きますがユンさんの発言です。
「ある時 、日中韓の年金専門家が集まって会議をした。
発表が終わると、年金業務を担当する日本の公務員がためらいながら質問してきた。
『韓国は日本の半分以下の保険料を負担しているたけなのに、どうしてより多くの年金を支給できるのか』と秘訣を尋ねられた。
恥ずかしくて顔を上げられなかった」
ユンさんが顔を上げられないほど恥ずかしかったのは、こういう理由です。
韓国政府は(恐らく間に合いませんが)遅まきながら年金改革を行おうとしており、その骨子(有力視されているプラン)というのが、
年金の保険料率を9%から13%に上げて、所得代替率を40%から50%に引き上げる
――というものなのです。
誰が聞いてもこう思います。保険の料率が「4%」しか上がらないのに、なぜ所得代替率は「10%」上げることができるのか?――です。
聞いただけで無茶苦茶だと思う話で、だからこそ日本の公務員は「どうしてそんなことができるのか?」と聞いたのです。
「足りない分はどうすんだよ?」なのですが、(なんらかの名目を設けて)税金を投入するつもりなのです。中国のことわざにある「朝三暮四」みたいな話で、ユン先生は以下のように罵倒していらっしゃいます。
(前略)
「国民年金第5次財政計算当時、所得代替率を40%に維持し、保険料率を15%に上げても財政安定を達成するのは難しいという結論が出ている。この推計でさえ、かなり楽観的な仮定を採用した結果だった。
2040年以降、合計特殊出生率が1.21人に回復すると仮定した。昨年の合計特殊出生率は0.72人で、第4四半期には0.65人に低下した。さまざまな側面から見ると、(1.21人に回復するというのは:引用者注)希望的観測に過ぎない」
「国民が保険料率の引き上げをあまりに嫌っているため、『保険料率を少しだけ上げて税金を投入しよう』という声が出たと思われる。
しかし、すでに解決すべき未積立債務だけでも1,825兆ウォンに達する。
国庫投入に使われる財源は空から降ってくるのか。
結局、経済活動人口が負担しなければならない。
次の世代は保険料率が13~15%で、別途税金も多く払わなければならないということになる。
彼らが受け取る国民年金の所得代替率は、既成世代よりはるかに低くなるだろうが」
(後略)
保険料率を少しだけ上げて(国民の目をくらませて)、所得代替率50%にするのに足りない分は韓国政府が負担しよう――という「いい加減なプラン」では、「その足りない分はどうするんだ?」というわけです。
結局、ツケは国民に回ってくるだろう――という指摘です。全くそのとおりです。
韓国では(本当の)専門家が恥ずかしくて顔を上げられないような年金改革プランが検討されているのです。
(吉田ハンチング@dcp)