多くの通貨を横並びで比較できるので「実効為替レート」は非常に使いやすい統計データです。実効為替レートには、以下の2つがあります。ちょっと難しい単語が出てきますが、お付き合いください。
●名目実効為替レート
為替相場において一つの通貨が他の通貨に対してどのくらい変化しているのか(変化率)を、貿易量などの比率を使って加重平均して算出したもの。
●実質実効為替レート
名目実効為替レートの変化率から、インフレによる通貨価値の下落分を差し引いて加重平均したもの。
「名目」実効為替レートは実際に市場で取り引きされているデータを基にして計算されるもので、使い勝手としては普通この名目実効為替レートで別にかまいません。
しかし、「通貨の価値」は為替市場・貿易等だけで変動するわけではありません。それら対外的な取り引きによる要因だけではなく、その国の物価変動によっても通貨の価値は変動しますね。
例えば、インフレになると物の価値が上がります。100円だったパンが120円になれば、これはパン(物)の価値が上がって通貨「円」の価値が下がったことになります。
逆にデフレになると物の価値が下がります。100円だったパンが80円になれば、パン(物)の価値が下がって通貨「円」の価値が上がったことになります。
市場・貿易等から計算される名目実効為替レートに、このような国内の物価変動による「通貨価値の変動」を加味して、その通貨の強弱を測る指数、これが「実質」実効為替レートというわけです。
ですので、対外的な実効為替レートであれば「名目実効為替レート」で十分ですし、国内の物価まで加味して考える場合には「実質実効為替レート」を用いれば良いということになります。
日本銀行は1970年1月から実効為替レートのデータを集計しています。これは、国際決済銀行(BIS:Bank for International Settlements)が計算し公表しているデータを基にしていますので、作成やウエイト(重み付け)などがどのように行われているのかについて興味がある場合には、下記URLを参照してください。
⇒データ引用元:『Bank for International Settlements』「Effective exchange rate indices」
https://www.bis.org/statistics/eer.htm
1980年01月から2018年01月までの名目実効為替レート・実質実効為替レートの推移を見てみると、以下のようになります(データ引用元は『日本銀行』公式サイト/グラフは筆者作成)。
それぞれの数値は2010年を「100」とした場合(1年の平均値が100)のもので、これには「円」などの単位はつきませんので注意してください。
(柏ケミカル@dcp)