中国の地方政府はお金に困っています。地方政府債務が莫大なことになっているのは先にご紹介したとおりですが、地方政府は自分が有する企業が資金ショートに陥っても、もはや救済資金を入れることができないのです。それどころか、自らの資金不足を企業に補填させるべく強硬な手段に出ています。
2020年12月23日、『貴州茅台集団』(Kweichow Moutai Group)は突然株式の4%(時価総額:925億元)を「貴州省国有資産監督管理委員会」に無償で譲渡しました。
日本ではあまり知られていませんが、同グループは非常に大きな企業です。傘下の『貴州茅台酒』は「茅台(マオタイ)酒」という高級白酒(パイチュウ)を製造しており、中国株式市場で2020年06月時価総額が第1位になっています。
しかし、なぜこんな「株式の無償譲渡」なんてことが起こるのでしょうか? これは、先に起こった『アリババグループ』(Alibaba Group Holding Limited)への独占禁止法違反調査と同種の事件です。地方政府が太った企業の富を収奪しているのです。
↑でご紹介したことがありますが、そもそもマオタイの支配権は「貴州省国有資産監督管理委員会」が握っており、高衛東会長は貴州省の交通運輸部長出身です。
そのため、『貴州茅台集団』は150億元(約2,300億円)の社債を発行、入手した資金で国有企業『貴州高速道路集団(Guizhou Expressway Group)』の株式を購入する――という無茶苦茶なオペレーションまで行なっています。今回の4%の株式無償譲渡も、このような流れの中で理解できます。
さらに株式の無償譲渡は初めてではありません。2019年にも4%(時価総額587億元)が譲渡されています。
今更いうことでもないのですが、中国企業というのは民間に独立して存在するのではありません。中国共産党政府にいいようにされるものなのです。だからこそ、国有企業であっても飛びますし、デフォルトが数度発生してもなぜかいつまでも存在し続けたりするのです。
ですが、このように恥も外聞なくこのようなことを起こすのは、もう資金について末期症状に陥っているからだともいえます。このざまで中国企業に投資しようなどと誰が思うでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)