韓国の航空産業第1位の『大韓航空』の経営が傾き、第2位の『アシアナ航空』が事実上ドボンなので、国策銀行『産業銀行』が旗振り役となって両社の統合を進めようとしています。
この統合のための資金の流れと仕組みについて、あらためてご紹介します。以下はその全体図です。
今回のM&Aは4つのステップで完成します。
まず①です。『産業銀行』が8,000億ウォンを、『大韓航空』の親会社である『韓進KAL』に投入します。
投入の仕方は第三者割当の有償増資に参加して5,000億ウォン、交換社債の買取で3,000億ウォン。有償増資は、資本の増強のために行う行為で、『産業銀行』の投入する5,000億ウォンに対して新株を発行します。交換社債は、株式に転換できる社債です。
つまり、『産業銀行』は『韓進KAL』の株主として支配力を持つわけです。
次に②。『韓進KAL』は、『大韓航空』の有償増資を行います。新株を発行して2兆5,000億ウォンを調達。これで現金がない『大韓航空』に2兆5,000億ウォンを投入できるわけです。
ここでポイントは、この2兆5,000億ウォンのうち7,300億ウォンは『韓進KAL』が投入する点です。株式の保有枚数で支配権が決まりますので、『韓進KAL』の支配力を弱めないためには7,300億ウォンを入れないとならないのです。このお金は『産業銀行』が投入した8,000億ウォンでまかなえます。
そして③。『アシアナ航空』が第三者割当有償増資を行い、『大韓航空』は1兆5,000億ウォンを投入します。同時に『アシアナ航空』の発行する永久債3,000億ウォンを買取ます。その会社が存続している限り利子をもらえる債券です。
投入される資金は計1兆8,000億ウォン。これは『大韓航空』に投入される2兆5,000億ウォンでまかなえます。また『アシアナ航空』に1兆8,000億ウォン入れても『大韓航空』には7,000億ウォン残ります。
この③によって『大韓航空』は『アシアナ航空』の最大の株主となります。『韓進KAL』は『大韓航空』を通して『アシアナ航空』にも支配権を持つことになるのです(『産業銀行』は『韓進KAL』を通して全てに影響力を有することになる)。最後に④の統合です。
このようなステップを踏んで『大韓航空』と『アシアナ航空』は統合されます。
Money1で先にご紹介したとおり『産業銀行』はすでに8,000億ウォンを投入しています。しかし、このスキームで現在懸念事項が持ち上がっています。何かお分かりになるでしょうか?
(松田ステンレス@dcp)