取り上げられていなかった中国の中央銀行の反応をご紹介します。
2021年12月03日、中国『恒大集団』は自身で「デフォルトするかも」というプレスリリースを出しました。
多くのメディアで「デフォルト宣言」とも取られたプレスリリースですが、同日、中国の中央銀行である『中国人民銀行』が「このリリースについて」のコメントを記者に求められ、回答しています。
以下が『中国人民銀行』が出した本件についてのリリースと和訳です。
1.刚刚,恒大披露了可能无法履行担保责任的公告,对此有何评价?
ちょうど今、『恒大集団』が債務の履行義務を果たせない可能性があるという発表を開示しましたが、これについてコメントは
答:恒大集团出现风险主要源于自身经营不善、盲目扩张。境外美元债市场是高度市场化的,投资人较为成熟、甄别能力较强,对于相关问题的处理也有清晰的法律规定和程序。短期个别房企出现风险,不会影响中长期市场的正常融资功能。近期,境内房地产销售、购地、融资等行为已逐步回归常态,一些中资房企开始回购境外债券,部分投资人也开始买入中资房企美元债券。
回答:
『恒大集団』のリスクは、主に自社のオペレーションの悪さと盲目的な拡大によるものである。海外のドル建て債券市場は高度にマーケット志向が強く、投資家の成熟度や審査能力が高く、関連する問題に対処するための明確な法的規制や手続きがある。
個々の不動産企業の短期的なリスクは、中長期的には市場の正常な資金調達機能に影響を与えない。
最近、国内の不動産売却、土地購入、資金調達などの行動は徐々に正常に戻り、一部の中国の不動産会社は海外の債券を買い戻し始め、一部の投資家も中国の不動産会社のドル建て債を購入し始めた。
中国始终坚持营造公平的市场环境,稳妥有序推进中国金融市场的双向开放。有关部门将继续保持与境外市场相关监管部门的沟通,敦促境外发债企业及其股东,严格遵守市场纪律和规则,按照市场化、法治化原则,妥善处理好自身的债务问题,积极履行法定偿债义务。对于企业汇出资金偿付及回购境外债券的,有关部门将在现行政策框架下提供支持和便利。
中国は常に公正な市場環境を作り、中国の金融市場の双方向の開放を着実かつ秩序正しく推進することを主張してきた。
関連部門は、引き続き海外市場の関連規制当局とのコミュニケーションを維持し、海外の債券発行会社とその株主に対し、市場規律と規則を厳格に遵守し、市場化の原則に従って自社の債務問題を適切に処理するよう要請する。
法の支配、および法定返済を積極的に実行する。
債務の関係部門は、企業から送金された資金の返済と海外債券の買い戻しについて、現在の政策の枠組みの下で支援と促進を提供する。
2.广东省人民政府同意向恒大地产集团派出工作组,对此有何评价?
2.広東省政府は、『恒大集団』にワーキンググループを送ることに同意した。これについてのコメントは?
答:应恒大地产集团有限公司请求,广东省人民政府同意向恒大地产集团有限公司派出工作组,这是推进企业风险处置工作、督促切实加强内控管理、维护正常经营的有力举措,人民银行对此表示支持。我们将继续配合广东省政府、相关部门和地方政府,做好风险化解工作,维护房地产市场的平稳健康发展,维护住房消费者合法权益。
回答:
『恒大地産集団』の要請により、広東省人民政府は『恒大地産集団』にワーキンググループを派遣することに同意した。これは、企業のリスク管理を促進するための強力な手段である。
内部管理を効果的に強化し、通常の運用を維持し、これを支援する。今後も広東省、関係省庁、地方自治体と連携し、リスクを解決し、不動産市場の安定的かつ健全な発展を維持し、住宅消費者の正当な権利と利益を守る。
『中国人民銀行』は、『恒大集団』の流動性枯渇について「主に自社のオペレーションの悪さと盲目的な拡大によるものである」と切って捨てています。
「個々の不動産企業の短期的なリスクは、中長期的には市場の正常な資金調達機能に影響を与えない」などと楽観的な話をしています。
『恒大集団』の危機は個々の不動産企業の短期リスクに過ぎないというのです。
いい気なものですが、果たしてそれで済むでしょうか?
ドイツのマーケット調査会社『DMSA』(大本は『ゴールドマン・サックス』の調査報告書)の読みが正しければ、CDSで1,580億ドルが吹き飛ぶのですが。
中央銀行ですから強がっていないと仕方がないのかもしれませんが、少なくとも外国の投資家は以前のようにやすやすと中国企業に投資はしないでしょう。ドル建ての資金調達に大きな影響を与えるはずです。
「中国が常に『公正な市場環境』を主張し『法の支配、および法定返済を積極的に実行する』」というくだりには笑うほかありませんが、中国の問題は「法の上に共産党がある」ことです。
「2」でご注意いただきたいのは、広州政府にワーキンググループの派遣を依頼したのは、『恒大地産集団』(Evergrande Real Estate Group)であって『恒大集団』(Evergrande Group)ではないという点です。『恒大地産集団』は本土で不動産開発を営む同グループの中核企業ですが、『恒大集団』傘下の別会社です。
先にご紹介した「解体処理」の委員会は『恒大集団』側にできています。
さて、このような中央銀行『中国人民銀行』の認識の下、『恒大集団』はどうなるでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)