今年2022年は、韓国と中国が国交を樹立して30周年に当たります。
Money1でも何度かご紹介しましたが、前文政権の時代から、両国の外相が会談しては「記念の年に一層の交流を深めたい」といった声明を出してきたのです。
さあこれが尹錫悦(ユン・ソギョル)政権でどうなるか、です。
最も注目されるのが、例の「三不の誓い」です。
①アメリカのミサイル防衛に参加しない
②日・米・韓の安保協力を軍事同盟化しない
③THAADの追加配備をしない
2017年、中国に「三不の誓い」を約束した文政権ですが、尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領は候補者時代に、韓国の主権に関わる問題であり、「THAADの追加配備(を行う)」という主張をしていました(正確にはTHAAD追加配備という文字をSNSに上げた)。
↑THAAD(Terminal High Altitude Area Defenseの略)。弾道ミサイルを終末段階で迎撃するためのシステムです。
日本との関係を元に戻す宣言して、就任以降交渉を行ってきた尹錫悦(ユン・ソギョル)政権ですが、結局事態は進展せず、(脇が甘い)岸田首相も原則論を守っているため、日本からの妥協も引き出せていはいません。
日米との交渉が一段落したので、いよいよ次は中国です。
朴振(パク・ジン)外交部長官(外務大臣に相当)が中国に向かう予定なのですが、2022年07月27日、中国は(ビーンボールのような)剛速球の牽制球を投げました。
趙立堅報道官の説教は韓国の愚かな点を突いた
中国の外交部の定例ブリーフィングで、この「三不の誓い」についての質問が記者から出て、毎度おなじみの趙立堅報道官が答えたのですが……。
以下がそのQ&Aです(中国外交部のプレスリリース)。ご覧ください。
東方衛視記者:
25日、韓国の朴振(パク・ジン)外相は韓国国会での公聴会で、中国は韓国との関係が長い歴史を持ち、双方は両国関係の健全で成熟した発展を導くべきだが、その過程で双方のコミュニケーション、信頼、戦略対話が欠けていると述べた。THAAD問題における韓国の「三不の誓い」政策は、中国に対するコミットメントでも、両者間の合意でもなく、韓国自身の立場を表明したものである、とした。
「これは韓国の国家安全保障と主権の問題であり、韓国自身が判断すべきことであり、中国が韓国に対して約束を履行するよう求めるのは受け入れがたい。
北朝鮮の核攻撃の脅威が高まるなか、中国はもはや「三不の誓い」政策を主張するのではなく、北朝鮮の非核化を実現するために建設的な役割を果たすべきである」とも述べている。 これに対して、中国はどのようなコメントを出しているのでしょうか。
趙立堅:
米国のTHAADの韓国への配備に反対する中国の立場は、韓国に向けられたものではなく、中国の戦略的安全保障を損なおうとする米国の望ましくない企てに向けられたものである。2017年に韓国側が発表した「THAAD」問題に関する厳粛な声明は、今も私たちの耳に残っており、両国の相互信頼を高め、協力を深める上で重要な役割を担っています。
新しい政府高官だからといって過去の歴史を無視することはできない。
韓国は今後も慎重に行動し、近隣諸国の安全保障に関わる主要な敏感な問題の根本的な解決策を模索する必要がある。
中国と韓国の国交樹立から30年。
両国関係は急速かつ包括的に発展し、両国民の利益と地域の平和、安定、発展に寄与してきました。 王毅国務委員兼外相は、韓国の新外相との初会談で、孔子の「信なくば立たず」という故事を引用し、人と人との交流は信頼に基づくべきで、国家と国家との交流ではなおさら重要であることを強調した。
ここで指摘しておきたいのは、どの国の外交政策も、どの政党が政権をとっているか、内政上の必要性にかかわらず、基本的な連続性と安定性を保つべきであるということである。
これは歴史を重んじるだけでなく、自分自身を重んじることでもあり、隣人との正しい付き合い方です。
中国は常に対話と協議による朝鮮半島問題の解決を提唱し、長年にわたり、半島の非核化を達成し、半島に恒久的な平和メカニズムを確立し、半島全体の平和と安定を維持するために絶え間ない努力を行ってきた。
中国はこの目的のために、責任ある態度で建設的な役割を果たし続けていく。
まず最初にいえるのは、この質問は中国の放送局の記者からのものなので、中国外交部が言いたいことを言うためにさせたものである可能性があります。
つまり、これは中国からの韓国に対する意見表明であり、言いたいことです。
趙立堅報道官は、韓国外交部の朴振(パク・ジン)長官、および尹錫悦(ユン・ソギョル)政権の「三不の誓い」についての姿勢を全否定しました。
趙立堅報道官の回答は韓国に対する説教に他なりません。
韓国は「三不の誓いは、あくまでも韓国の姿勢を表明したものであって、三不の誓い①②③は韓国の主権・安全保障に関わることであるから、韓国自身が決める」と主張しています。
しかしながら、これは中国からすれば認められないことです。
意見表明だろうがなんだろうが、「中国と約束したじゃないか、それを今さら破るのか?」というわけです。
先にもご紹介したことがありますが、韓国は「政権が変わったから」「あの時とは状況が変わったから」などと、なんだかんだ理屈をつけて約束を反故にし平然としているという国です。
日本に対してしていることも全く同じです。文政権は朴槿恵(パク・クネ)政権で締結されたものであり、被害者の合意は得られていなかったからと、2015年の慰安婦合意を平然と反故にしました。
中国に対する「三不の誓い」も同じです。
中国からしてみれば、今になって尹錫悦(ユン・ソギョル)新政権がこれを反故にしようというのは、全くの約束破りに他なりません。
つまり、韓国は相手が日本だとろうと中国だろうと、どの国が相手でも約束を破って平気な国なのです。
このような姿勢に対して、趙立堅報道官は非常に真っ当な説教を行ったのです。
「どの国の外交政策も、どの政党が政権をとっているか、内政上の必要性にかかわらず、基本的な連続性と安定性を保つべきである」の部分です。
これは、日本が韓国に言いたいことそのままです。
「文在寅が大統領になろうが、そんなことは関係ない。国としての連続性を守って、前政権が約束した慰安婦合意を守れ!」ということです。
また、現在問題として浮上してしまった、いわゆる徴用工問題についても「政権が変わろうが、解釈が変わろうが、裁判所の判断が変わろうが、1965年の日韓請求権協定を守れ!」ということです。
繰り返しますが、これは趙立堅報道官による韓国に対しての痛烈な説教です。
韓国の「約束など一時の方便である」といわんばかりの愚かな外交姿勢を罵倒しているのです。皮肉なことに、趙立堅報道官は「日本が韓国に言いたいこと」を言ってくれました。
本件について、中国が韓国にどのような姿勢を取るのかは日本にとっても参考になるでしょう。約束を守らない国をどのように扱えばいいのか、恐らく中国が手本を示してくれるはずです。
(吉田ハンチング@dcp)