韓国の時限爆弾として不動産PF(プロジェクトファイナンス)の債務残高が異常に積み上がっている件があります。
不動産開発には巨額が必要ですので、PFの手法を用いて資金を集めてきました。開発物件の竣工後のキャッシュフローを担保にしたABCP(Asset-Backed Commercial Paper:資産担保コマーシャルペーパー)を発行するという手が一般的で、もうけも大きいものですから証券会社も積極的に関わってきました。
問題は、民間の不動産開発だけではなくて、PFの手法は地方政府などのハコモノ行政でも使われていることです。2022年10月に起こった『韓国レゴランド』のABCPの不渡り宣言事件のように、満期が来たのに償還できないと大変なことになります。
そのため、先にご紹介したとおり2022年末に韓国政府は慌てて地方政府が関与しているPFについてチェックを行いました。一応「大丈夫」という結論は出したのですが、本当に大丈夫なのかは(韓国のことなので)フタをあけてみないと分かりません。
実際、何かあったときのために金融当局がアップを始めました(後述)。
まず、『韓国預託決済院証券情報ポータル』によると、
01月:17兆ウォン
02月:10兆ウォン
03月:5兆ウォン
小計:32兆ウォン
と第1四半期だけで総額32兆ウォンものABCPが満期を迎えます。
どれかが『韓国レゴランド』のように「ダメです償還できません」になったら、またぞろPFスキームおよび関わる債券についての信用が失墜し、金利が急騰して資金調達市場が大打撃を受けるでしょう。
ただでさえ、韓国の不動産市場は今度こそバブルが崩壊するのではないか?といわれている昨今です。
「そうはさせじ」と韓国の金融当局が動き出しています。
15兆ウォンの融資保証を提供するぞ!
金融当局は、PFに転換できるという保証を10兆ウォン規模で用意するとしています。これは、建設会社や施行会社が着工前に貯蓄銀行などから高い金利でブリッジローン(つなぎ融資)で敷地買取などの初期費用を充当したた後、工事が始まって事業性が認められると低い金利の本PFに乗り換えることができる――というものです。
事業性が認められるかどうかお上の胸三寸ではありますが、高い金利でPF ABCPを発行してどうにもならなくなるよりはマシな手段です。親方太極旗なので償還されないかも、という事態はないですね。ただ、資金が全部そちらにいかないかという懸念はあります。証券会社は張り切って売るでしょうが。
また、短期のPF ABCPを長期融資に切り替えることができるという事業保証も5兆ウォン規模で01月以内に用意する――としています。
これで「バッチコーイ!」となるかどうかは分かりませんが、「危ないので準備しておく」という政府の姿勢は評価できます。これも不動産セクターが傾いたら危ないという危機感の現れです。
韓国の資金調達市場にサードインパクトがこないかどうかご注目ください。
(吉田ハンチング@dcp)