南シナ海、南沙諸島のSecond Thomas Shoal（セカンド・トーマス礁：仁愛礁）を巡って、フィリピンと中国の対立が激化しています。
Money1でもご紹介したとおり、2023年10月04日、フィリピンが（わざと座礁させた）「シエラマドレ」への補給業務を行おうとしていたところ、中国の海警局がそれを阻止するように船の行く手を阻みました。
フィリピンの補給船と中国・海警局の船が接触まであと1メートルほどまでいき、もはや一触即発です。
長い国慶節の休暇がやっと明けた2023年10月09日、中国政府の外交部は本件について以下のようなプレスリリースを出しました。
質問：
10月7日、フィリピン国軍（AFP）の報道官は、中国が「西フィリピン海」に対して争いのない主権を主張していることは議論の余地があると述べました。中国の「根拠のない」主張と西フィリピン海での行動は無責任だ。これに対する中国のコメントは？回答：
最近、フィリピンは仁愛礁で一連の行動をとり、中国の領土主権を深刻に侵害しており、中国はこの点についてフィリピンに繰り返し厳粛な申し入れを行ってきた。 中国は以下の点を改めて表明したい：第1に、仁愛礁は常に中国の領土である。
地理的、経済的、政治的、歴史的に見ても、仁愛礁は中国の南沙諸島の不可欠かつ重要な一部であり、これは国際社会の幅広いコンセンサスとなっており、国連海洋法条約の群島に関する規定に完全に合致している。 中国は、仁愛礁を含む南沙諸島とその隣接水域に対する紛れもない主権を有しており、それは長い歴史的過程の中で形成・確立されたものであり、国際連合憲章を含む国際法に合致している。
第2に、仁愛礁がフィリピンの領土であったことは一度もない。
フィリピンの領土範囲は、1898年の米西和親条約（パリ条約）、1900年のフィリピンの離島の割譲に関する米西和親条約（ワシントン条約）、1930年の英領北ボルネオと米国およびフィリピンとの間の境界画定に関する条約によって定められており、仁愛礁を含むスプラトリー諸島はフィリピンの領土範囲から完全に外れている。仁愛礁がフィリピン領に近いことを理由に領有権を主張することには、全く法的根拠がない。
第3に、南シナ海仲裁裁判のいわゆる裁定は違法かつ無効である。
フィリピンが起こした南シナ海仲裁裁判は、領土主権と海洋境界線の問題に直接関わっている。 領土問題は国連海洋法条約の調整範囲には入らない。
同時に、中国政府は2006年、同条約第298条に従い、海洋境界画定などの問題をいかなる国際司法・仲裁管轄権からも除外した。
フィリピンによる南シナ海仲裁裁判の一方的な開始は、条約の規定に違反している。仲裁廷は「国家の同意」の原則に違反し、管轄権を超えて恣意的な判断を下し、その裁定は違法、無効であり、いかなる拘束力も持たない。
上記の裁定に基づき、仁愛礁がフィリピンの排他的経済水域および大陸棚に属するとするフィリピンの主張は、法的に支持できない。
第4に、フィリピンの軍艦が仁愛礁に「座礁」したことは、中国の領土主権を著しく侵害した。
1999年05月、フィリピンは第57号戦車揚陸艦を派遣し、仁愛礁に違法に「座礁」させた。
中国は直ちに厳重に抗議し、フィリピン側に軍艦を直ちに曳航するよう要求した。
フィリピン側は軍艦を早急に曳航することを繰り返し約束した。 しかし、24年経った今もフィリピン軍艦は同じ場所に「座礁」している。
中国は、フィリピンが繰り返し約束を反故にし、中国の領土主権を侵害していることを受け入れることはできず、フィリピンには「座礁」した軍艦を曳航する責任がある。
第5に、海上の現状に対する責任はすべてフィリピンにある。
フィリピンはここしばらくの間、中国側の好意と誠意を無視し、公船や軍艦を強制的に仁愛礁の近海に侵入させ続け、不法に漂着した軍艦の大規模な修理や補強のための建設資材を運び、仁愛礁の恒久的な占領を実現しようとしている。
フィリピンのこの行動は、中国の領土主権と海洋権益を深刻に侵害し、国際法と南シナ海における締約国の行動に関する宣言に違反し、地域の平和と安定を損なうものである。
中国側はフィリピン側に対し、南シナ海の平和と安定に影響を及ぼし、これを損ない、この地域の国々の共通の利益を危うくすることを避けるため、中国の懸念に注意を払い、海上でのトラブルの誘発をやめ、不当な攻撃や中傷をやめるよう改めて強く求める。
中国は、中国の領土主権と海洋権益を断固として守るため、国内法および国際法に従って必要な措置を取り続ける。
⇒参照・引用元：『中国 外交部』公式サイト「外交部发言人就仁爱礁问题答记者问」
「ふかし」もいいところの回答で、よくこんな厚顔無恥な主張を行ったものです。
第1に、仁愛礁は中国の領海・領土ではありません。それについては「南シナ海仲裁裁判」の裁定において明らかにされており、中国の主張と裁定無視は完全に国際法違反です。
中国は自分の都合のいい裁定にだけ「国際機関がそう言っている」と従っているかのようなフリをし、都合の悪い結論が出るとそれをホゴにしようとします。
福島処理水についても全く同じで、『IAEA』（国際原子力機関）の結論に対して全く科学的でない主張をいまだに行っています。
第2に、中国の主権の及ぶところでない以上、フィリピンの揚陸艦「シエラマドレ」を座礁させた行為について「中国の主権を侵害した」などと主張することはできません。
第3に、「南シナ海仲裁裁判」の裁定は全く公正なものであり、中国は国際的なルールに従って裁定を受け入れなければなりません。
第4に、現在南シナ海で起こっている紛争の全ての責任は中国にあります。現在の国際的なルールを全く無視した行動・主権主張を行っており、これを撤回することが平和的な解決への道です。
そうでなければ、遅れてきた帝国主義的な主張を行う中国を関係国でタコ殴りにする必要が出てくるでしょう。
（吉田ハンチング＠ｄｃｐ）
