先の、韓国政府の発行する「外国為替平衡基金債券」(以下「外平債」と表記)についてご紹介した記事の中で、取り上げ損なった部分について触れておきます。
まず、この外平債というものについておさらいです。
・外平債は韓国政府の発行する債券である(=借金)
・外平債は為替レートをコントロールする資金を入手するために発行される
・「ウォン建て」「ドル建て」の両方で発行されている
・外平債を発行して得た資金は「外国為替平衡基金」に入る
資産の少ない韓国政府が為替介入資金を得るために債券を発行しなければならなかったというのは、まあ理解できなくもありません。しかし、債券を発行して得た資金をナニかに投資しているというのは「?」です。
以下の2019年12月30日の『韓国経済新聞』の記事からの引用を見てください。
(前略)
外平債を発行して造成する外国為替平衡基金の運用収益率さえ低下傾向にある。政府は、外国為替平衡基金ほとんどを米国債などの確定金利型安全資産に投資している。グローバル金利の低下の影響で、10年満期米国債金利は年1.87%の水準まで落ちた。
(後略)
⇒参照・引用元:『韓国経済新聞』「매년 이자만 3000억 달하는데…외평채 또 찍겠다는 정부」
https://www.hankyung.com/economy/article/2019123020101※アンダーラインは筆者による。
ちょっと待て!と思われないでしょうか。国内でウォン建てで発行するなら普通の国債と変わりません(現在ではウォン建て外平債は国債に統合されています※1)が、外貨建てでも発行していますからその分は外貨建てで利息を払わなければならないわけです。
実際の「利回り」の話は置いて、利率について考えてみます。そもそも外平債に付ける利率が合衆国公債よりも低いわけありません。
なぜなら合衆国公債はリスクフリーといわれ、つまりデフォルトする可能性がほぼない金融商品。例えば合衆国公債の利率が3%だとすると、韓国が発行する債券はそれにいくらか上乗せして4.5%、あるいは5%など※2に設定しないと買ってはもらえません。
当たり前の話ですが、同じ3%の利率で合衆国公債と韓国政府の発行する債券があれば、誰でも合衆国公債を選びます。デフォルトの可能性がない、つまりリスクのない方を取るのは当然ですね。債券の利率は、合衆国公債の利率を基準にして設計されているわけです。
外平債は合衆国公債よりも高い利率で発行されており、つまり韓国政府が支払わなければならない利息は合衆国公債よりも大きいわけです。
なのに、集めた資金を合衆国公債の購入に充てている?――利率だけを考えれば、合衆国公債から入ってくる利子収入より、韓国政府の発行する債券による利払いの方が大きくなりますよね。
「それって絶対損するじゃん!」と思われませんか。
もちろん「利率」と「利回り」は違うので「儲かるよ!」という場合があるかもしれませんが、それでもやっぱり「ナニやってんの」と突っ込みたくならないでしょうか。
※1
外平債の国債統合は2003年11月から行われています。
⇒参照:『archive.today』「企画財政部・経済用語辞典」
https://archive.ph/sUFAd
※2
利率の%はあくまでも例です。リスクを見積もり利率をきちんと算出する方法があります。
(柏ケミカル@dcp)