韓国の貿易収支が99カ月ぶりに赤字に転落。韓国は輸出産業一本で食べている国ですので、この結果は衝撃をもって韓国メディアに取り上げられています。
貿易収支というのは、輸出額から輸入額を引いて求めます。
韓国の場合には物品を輸出して稼いでいますので、輸出額の方が大きく、貿易収支はずっと黒字でした。ところが今回の新型コロナウイルス騒動で輸出金額が大きく減少し、赤字になってしまったのです。
2020年04月の具体的な結果は以下になります。
輸出:369億2,000万ドル(前年同期比24.3%減少)
輸入:378億7,000万ドル(前年同期比15.9%減少)
小計:9億4,600万ドルの赤字
今回の赤字は「非不況型赤字」だそうです
深刻な事態ですが、韓国メディア『NEWSIS』の2020年05月01日付けの記事によれば、韓国政府はこの結果にも「良好だ」と判断しているとのこと。
同記事から以下に引用します。
(前略)
政府は、これまでにない感染症のパンデミック(世界大流行)は世界共通の現象で、貿易収支の赤字は避けがたいものだったと診断した。
過去の原油高の時期や輸出よりも輸入が大きく減少する不況とは異なり、構造的に良好な状況だという分析も出した。
※赤アンダーライン、強調文字は筆者による(以下同)
新型コロナウイルス騒動が大きな影響を与えたのは確かですが、韓国の貿易収支はこの騒動がなくても早晩赤字に転落していたとも考えられるのですが、それはひとます置きます。
韓国政府が「構造的に良好だ」と分析している点は注目に値します。
なせそう判断するのでしょうか? 同記事は以下のように続きます。
世界的な金融危機当時の2009年1月には、韓国の資本財と中間財の輸入は、それぞれ前年比31.3%、28.2%に減少した。同時期の貿易収支は38億ドルの赤字だった。
生産と投資に影響を及ぼしながら、以後、韓国は10カ月連続という長期の輸出不振を続けた。企画財政部はこれを「不況型貿易赤字」と説明した。
逆に、先月記録した9億5,000ドルの貿易赤字は「非不況型」と規定した。
消費財と中間財の輸入がそれぞれ前年比9.0%、13.9%減少したが、全体の収入の減少と比較して相対的にその幅が少なかったのである。資本財の場合、むしろ1.3%の増加を見せた。
私たちの製造業は、他の主要国に比べて生産中止(シャットダウン)せずに、通常どおり稼動し、これにより、中間財や資本財などが継続的に輸入されたという分析も出ている。
品目別にみると、コンピュータ(12.8%)、無線通信機器(9.6%)、自動車(12.1%)の輸入の増加が目立った。
企画財政部は、主要国と比較して、韓国の内需条件が比較的良好であるシグナルと見ることができると評価した。
(後略)
韓国当局の説明では、韓国通貨危機の貿易収支赤字は「不況型赤字」で、今回の赤字は「非不況型赤字」なのだそうです。
「よそも赤字」だから大丈夫!
さらに同記事では、「韓国だけが赤字なわけじゃない」と以下のように述べています。
(前略)
4月の貿易収支赤字は韓国だけでなく、コロナ19の影響による世界的な現象であることも、過去とは異なると見る背景だ。中国は2017年3月以降34カ月連続の黒字を続けてきたが、今年1~2月には赤字に転換した。
日本の場合、2月に1兆1,088億円の黒字を出したが、3月には50億円で1カ月で黒字は99.5%減少した。
加えて、アメリカ合衆国、フランス、イギリス、香港などの主要な輸出国でも、すべて1~2月の貿易収支で赤字を記録した。
(後略)
「よそも貿易収支が赤字だから気にすることはない」というのは、あまりいい態度とは言えないでしょう。
しかも、「主要な輸出国」としてひとくくりにしている国が非常に大ざっぱです。日本はもはや輸出で稼ぐ国ではなくなっていますし、中国も内需依存へ転換しつつあるところ。合衆国やイギリスは輸出依存国ではありませんし……と分析がいい加減です。
韓国のように輸出一本で食べている国が貿易収支で赤字になったら、それは「ダメでしょ」と考えないといけないのではないでしょうか。
(柏ケミカル@dcp)