中国の銀行で最近「取り付け騒ぎ」が起こっていることをご存じでしょうか。取り付け騒ぎというのは、銀行が倒産するかもしれないと、預金者が窓口に殺到し、自分のお金を一斉に引き出そうとする騒動のことです(英語では「bank run」といいます)。
中国地方政府当局(と銀行)は「悪質なデマ」として、「銀行が飛ぶかも」といったデマを流した人を取り締まる動きに出ているのですが、「火のないところに煙は立たない」の言葉どおり、そのような騒動が起こるのもムリはないというデータがあります。
気の遠くなるような不良債権残高「3兆6,000億元」
中国の「銀行・保険監督管理委員会」によると、2020年上半期(01-06月)で、中国の銀行の不良債権残高は「3兆6,000億元」(約55兆800億円)※1に達しました。
2020年の年初来「4,400億元」(約6兆7,320億円)も増加しており、2019年第1四半期と比べると「1兆2,300億元」(約18兆8,190億円)の増加です。
以下のグラフをご覧ください。
右の縦軸の目盛りは、「2013年第4四半期」の「不良債券残高:4,685億元」を100%としたときの比率です。新型コロナウイルス騒動のせいもありますが、2020年第2四半期にはついに「768%」に到達しました。
無茶苦茶な数字です。
ご多分に漏れず、中国も新型コロナウイルス騒動から経済を回復させようと、市中にじゃぶじゃぶお金を回していますが、これがまた不良債権を積み上げる結果となっているのです。
不良債権は「回収不能な貸し付け」ですから、不良債権の急激な増加は当然「銀行の信用問題」に関わり、銀行の健全性を大きく毀損します。
著名な投資銀行『UBS』は「中国の中小銀行は3,490億元(約5兆3,397億円)の資金不足に苦しんでいる」と推測しています。格付け会社『S&P』(スタンダード&プアーズ)は「2020年に中国の銀行の不良債権は8兆元(約122兆4,000億元)まで増加する」と見ているとのこと。
そりゃ「銀行は大丈夫だろうな」という気持ちになるでしょうし、取り付け騒ぎだって起ころうというものです。
※1元円換算は2020年07月18日の「1元=15.30円」を用いました
(吉田ハンチング@dcp)