中国通信機器最大手『ファーウェイ(華為技術有限公司)』の孟晩舟CFO(Chief Financial Officerの略:最高財務責任者)がカナダで逮捕。逮捕の容疑は、アメリカ合衆国の対イラン制裁に違反した容疑でした。同様に対イラン制裁に違反したとして手ひどく扱われた「ZTE」という会社があります。どのような目に遭ったのかまとめてみました。
「ZTE」はスマホ世界シェア第4位の大企業
「ZTE」と呼称される「ZTE Corporation」は、漢字では「中興通訊」と書きます。1985年に中国のシリコンバレー「深圳(シンセン)市」で設立された会社で、通信機器、通信設備、通信端末を製造・販売することを主な業務としています。
日本人はあまりピンときませんが、現在ではZTEは世界的企業で、特にスマホの分野では大きな存在感を持っています。2015年ヨーロッパ市場においてシェア第5位を達成、2018年にはアメリカ市場でもシェア第4位を占めるまでになったのです(世界シェア第4位、中国シェアでは第2位です)。
しかし、ZTEという会社はアメリカの課すルール(禁輸措置)をこれまで再三に渡って破ってきました。例えばテキサス州での騒動があります。
●2012年03月
テキサス州裁判所が禁輸措置破りでZTEの調査を開始
●2013年11月
禁輸措置で調査中であるにも関わらず、迂回会社を用いてイランへの輸出を継続していたことが発覚
2016年には、アメリカ合衆国商務省(United States Department of Commerce)が第三者を派遣してZTEを調査します。しかし、ZTEはこの調査において情報の隠蔽工作を行います。ついに商務省は「輸出規制措置」を発動します。
●2016年03月
アメリカ合衆国商務省がZTEとその関連会社を「輸出規制」の対象に指定。
この後のZTEの対応も全く不誠実なものでした。
外国に物品を輸出業者にはその内容などによって「ライセンス」を取得する必要があります。商務省によって輸出規制の対象をなったということは、このライセンスが無効になったということです(ライセンスの停止)。ZTEがどうしたかというと、「Temporary General License」という、ライセンスがなくても輸出について「一時的に許可されるライセンス」を使ってそれでも規制破りを続けたのです。
この仮免みたいな「Temporary General License」は、名前のとおり「temporary(テンポラリー)」(「一時的」「仮の」といった意味)ですから、正式なライセンスを取得するまでの期間だけ――といった使い方がされるのが普通です。しかし、ZTEは「Temporary General License」をずるずると更新し続け(2017年03月まで)、それによって輸出規制をかわそうとしたのです。
商務省はついに、
●2017年03月
・11億9,000万ドルの罰金を科す
(罰金8億9000万ドル/さらに違反が発覚した3億ドルの追徴金)
・懲戒処分の実行(関与した従業員の解雇、ボーナスの減額などのけん責処分)
という制裁処置を発動します。
しかし、それでもZTEは誠実に対処しませんでした。社内のけん責処分どころかボーナス全額支給が行われていたのです。この不誠実さが明らかになったため、商務省はさらなる制裁処置を行います。
●2018年04月
合衆国企業によるZTEへの製品販売を7年間禁止する
この処置によってZTEは必要なチップ、チップセットなどを入手できなくなり、
●2018年05月
ZTEが主要事業の運営停止に追い込まれる
となったのです。しかし、このように制裁までの経緯を見てますと余りにも不誠実なZTEのやり口が背景にあることは明らかです。ZTEの首脳部は、アメリカの商習慣、ルールを甘く見ていたとしか考えられません。中国国内のように抜け道を探せばいい、とでも思っていたのでしょう。この合衆国をなめた態度は高くつきました。
ただ、ZTEが大企業で社員も多く、もしZTEが廃業に追い込まれたら社会的な不安が高まるという懸念もあることから、トランプ大統領が妥協に動きました。
2018年07月
・取締役全員(計8名)を解任。取締役会(ボード)メンバーを一新
・リスク管理責任者をアメリカから派遣してこれを置く
・10億ドルの罰金を支払う
・預託金4億ドルを合衆国の銀行に供託する
という制裁解除案を示しました。厳しい措置かもしれませんが「不誠実さの代償」としては安価で済んだという考え方もあります。
さて、ZTEと同じく「対イラン制裁に違反した」とされるファーウェイはどうなるでしょうか? 直近の焦点は、カナダが孟晩舟CFOの身柄をアメリカに引き渡すかどうでかです。
(柏ケミカル@dcp)