2020年11月20日、『韓国銀行』は一般向けに「中央銀行間『通貨スワップ』の理解」という講義を実施しました。講師には国際協力局金融協力チームのジャン・ジュンヨウン次長が立ち、「通貨スワップ」についての説明を行っています。これは『韓国銀行』からの直接の解説あるため非常に興味深いものです。
講義の中からポイントをピックアップしてご紹介します。まず「通貨スワップ」についての概念説明です。
まず「スワップ」という用語については以下のように説明しています。韓国語のスライドは『韓国銀行』が公開している資料から引用しました(以下同)。
二つの金融資産または負債から派生する将来のキャッシュフロー(cash flow)を相互に交換することを内容として締結する金融契約。例えば金利スワップ、外国為替スワップ、通貨スワップなど
□通貨スワップ(Currency Swap)
取引当事者間の異なる通貨を交換し満期時の元本を再交換することに合意する取引であり、契約期間が終了したら相互交換が行われる
⇒参照・引用元:『韓国銀行』公式サイト「中央銀行間『通貨スワップ』の理解」(原文・韓国語/筆者(バカ)意訳:以下同)
韓国について注目されるのは二つ目の「通貨スワップ」で、「中央銀行間の通貨スワップ」について以下のように説明しています。
このスライドの訳は以下です。
※「リクエスト銀行」「サポート銀行」内の(通貨A)(通貨B)は筆者が追加しました
『韓国銀行』の説明は、FRB(Federal Reserve Boardの略:連邦準備制度理事会)による「ドル流動性スワップ」の説明とほとんど同じで、以下のような段取りを踏むと言っています。
②取引日になったら、あらかじめ決められた為替レートで等価になる「通貨A」と「通貨B」を交換する(swap)
③有効期限、すなわち満期日が来たら、支援を要請した銀行は「通貨B+利子」を、支援を要請された銀行は「通貨A」を交換する(swap back)
※満期時の取引もあらかじめ決められたレートで行うので、支援を要請された銀行はその間の為替レートによる変動によって損を被ることはない
つまり、『韓国銀行』は中央銀行同士で締結する、このような概念の取引を全て「中央銀行間の通貨スワップ」(取り決め)と認識しているということになります。ですから、FED(Federal Reserve Systemの略称:連邦準備制度)と締結した「ドル流動性スワップ」、いわゆる「スワップライン」も「通貨スワップ」と呼称しているのです。
『韓国銀行』は以下のように「通貨スワップ」の意義についてまとめています。
市場でウォンの流動性が不足したとき、これを供給するための最終的な資金供給源の役割(最後の貸し手)を果たす。
『韓国銀行』が発行することができない外貨が不足する場合に備えて、(外貨の)発券力を持つ最後の貸し手となる中央銀行とあらかじめ約束を結ぶことが通貨スワップである。
中央銀行間の通貨スワップは、スワップを提供する中央銀行が外国の中央銀行と銀行を相手に最後の貸し手の役割を果たすことと同じで、外国の中央銀行は自国の銀行の返済能力などを評価し、これに伴う信用リスクを負担する形になる(Bahaj&Reis2018)。
この仕組みのおかげで、『韓国銀行』はウォンを海外の中央銀行に預け、不足する外貨を借りてくることができる。
「通貨スワップ」を中央銀行間の最高レベルの金融協力と表現する理由でもある
ウォンの不足なら『韓国銀行』が刷ればいいが、外貨はそうはいかない。外貨が不足する場合に備えて、外国の中央銀行と締結するのが「通貨スワップ」であり、これは外国の中央銀行が『韓国銀行』に対して最後の貸し手の役割を果たすことである、と説明しています。
また、「通貨スワップ」は、中央銀行が(相手国の)「中央銀行と市中銀行についての信用リスク」を負担することであり、そのために『韓国銀行』は外貨を調達できる――としていますが、これは外国の中央銀行が『韓国銀行』と韓国の市中銀行に対する信用リスクを取れるから、と言いたいわけで、なんだか自慢にも聞こえる物言いです。
(柏ケミカル@dcp)