韓国LCC(格安航空会社)の最大手『済州(チェジュ)航空』が飛びそうになっています。2020年には移動の制限によって旅客が激減し、経営難に陥ったからです。
『済州航空』はなんとか生き残ろうとまた資金調達に乗り出しています。
経営難で調達した1,506億ウォンが蒸発
まず、以下の『済州航空』の営業利益の年次推移をご覧ください。
2016年:584億ウォン
2017年:1,013億ウォン
2018年:1,012億ウォン
2019年:-329億ウォン
2020年:-3,558億ウォン
2017年は韓国で日本旅行がブームになって韓国LCCは大きな恩恵を受けました。それが2019年には、日本の輸出管理強化に端を発する「NoJapan運動」でドル箱の日本路線利用者が大幅に減少。
そのため、韓国LCCは一気に経営が傾きました。『済州航空』もその例に漏れず営業利益が赤字に転落。2020年は旅客のさらなる激減によって「3,558億ウォンの赤字」で資本蚕食寸前になったのです。
経営難となった『済州航空』は2020年05月に有償増資を発表。08月有償増資の「1,506億ウォン」を得て、なんとかひと息つきました。
ところが、以降も経営は好転せず、結局資本蚕食状態に陥ったのです。つまり、有償増資によって得た1,506億ウォンは蒸発してしまいました。
また1,500億ウォンを調達する!
2021年も『済州航空』の経営難は続いています。キャッシュがショートしたらそこで終わりです。『済州航空』はどうしてもキャッシュを調達しなければなりません。
そこで「無償減資」を実施してから「有償増資」を行うことを考えています。
「無償減資」とは、資本金を減少させる手続きですが、会社の資金を減少させないで済むというメリットがあります。欠損金の補てん、あるいは節税のために行われますが、『済州航空』の場合はもちろん欠損金を補てんして経営を建て直すためです。
資本金を現在の1,924億ウォンから一気に1/5の384億ウォンにします(この差額で欠損金を補てんする)。これに伴い、普通株式額面5,000ウォンが1,000ウォンに減額されます。
当然、株主の承認が必要ですので、08月13日に開催される予定の臨時株主総会でこれを議決し、その上で「有償増資」を行います。
有償増資は、新株を発行して資本金を増やすために行います。増資の規模は「2,000億ウォン」で、新株は『済州航空』の53.39%を保有する『AKホールディング』に多くを割り当て、残りは公募するとのこと。
この一連の「無償減資」「有償増資」のコンボがうまくいけば2,000億ウォンが確保でき、『済州航空』の資本蚕食状態は改善される、と一応予想されています。
うまくいかなければ本当に飛ぶかもしれません。
韓国航空産業は危機を脱したわけではない
合併話が進んでいるため現在は、なんとなく大丈夫みたいな雰囲気になっていますが、『大韓航空』と『アシアナ航空』も決して危なくないわけではありません。
将来の絵図面を国策銀行が描き、有償増資によってひと息ついただけで『産業銀行』はじめ債権団からの資金支援がなければキャッシュショートしかねない状況です。
韓国の航空産業はどの会社も危機的な水準にあるのです。
(吉田ハンチング@dcp)