韓国メディアに「3高」という言葉が登場するようになっています。
高金利
高為替レート(ウォン安)
を総称しているのですが、全部そのままで大変にこの先の経済が不安視されています。
尋常ではない物価高に襲われており、国民生活が苦しくなっていますし、このインフレを退治しようとして金利を上げると、当然ですが家計負債の金利負担が増大します。
読者の皆さまもご存じのとおり、家計負債が2022年には対GDP比で106%超えで「1,862兆ウォン」となります。
『韓国銀行』の試算では、規準金利が0.25%(25bp)上がると、家計の利子負担は2兆9,000億ウォン増加します。
そのため、インフレ退治には金利を上げないと仕方がないのですが、家計セクターでデフォルトの津波を起こさないためには慎重にならざるを得ません。
しかし、アメリカ合衆国では同じくインフレ抑制のために金融引き締めが急務であり、大きく金利を上げようとしているのです。米韓の金利差が大きくなると……当然、韓国から資金が抜けます。
韓国に資金を置いておくより合衆国に移動した方がもうかるからです。
当然、この流れが強くなると「ウォンからドルに両替して韓国から脱出」(ウォン売りドル買い)が大きくなるので、ウォン安が進行します。
資金逃避は韓国が最も避けなければならないことで、これを阻むためにも合衆国に置いていかれないよう金利を上げるべきですが、前記のとおり、これまでに積み上げた莫大な家計負債の爆弾が破裂する可能性があるのです。
現進行中の猛烈なウォン安には、韓国企業の体力を奪う力があります。
というのは、韓国企業はその特質上、資源・資本財・中間財を輸入しなければ輸出品を作ることができません。輸入を止めると輸出品を作れないのです。つまり、輸入を行うために決済用の外貨(80%がドル)が要ります。
猛烈なウォン安が進行すると、どうなるでしょうか?
ドル預金があるうちはそのドルで支払えばいいのですが、これが尽きてくると、ウォンをドルに換えて支払う必要があります。ウォン安が進行すると、ドルを調達するのに余計にウォンが要ることになり、その分、韓国企業の資産が減少するのです。
この傾向はすでに現れています。実際、韓国企業の外貨預金は減少しているのです。
― ドル預金の場合、企業の海外投資資金および輸入決済代金引き出し、個人の現物為替売り拡大などの影響で減少
⇒参照:引用元:『韓国銀行』公式サイト「2022年03月 居住者外貨預金動向」
上掲は『韓国銀行』が公表した2022年03月時点での外貨預金ですが、企業は「44.7億ドル」減少しました。
悪いことに、世界的な資源価格の急騰により、資源・資本財・中間財の価格は上がっているのです。ですから、韓国はそもそもの値上がりプラス猛烈なウォン安というダブルパンチを食らっていることになります。
↑オレンジの線がドルウォン。青の線がドル円。上昇すればするほどドルに対して安くなっていることを示す。対ドルレートでは円の方がウォンより安くなっている。
さらにもう一つ。円がウォンよりも対ドルレートで安くなっています。これは、高品質な日本製品の価格戦闘力が高まっていることを意味します。韓国製品が日本製品より価格戦闘力を失うと、これは売上に影響を及ぼすことになります。
書いているだけでもどんよりした気持ちになってきますが、韓国は四面楚歌状態です。しかも先にご紹介したとおり、韓国にとって最も大事な貿易のもうけが減少傾向にあるのです。
――貿易収支が赤字に落ち込んでいるので景気は悪化します。その中で物価が上がっています。
スタグフレーション突入かというわけです。いえ、もう突入しているかもしれないのです。「いつ落ちたか」は後にならないと分かりませんから。
(吉田ハンチング@dcp)