先に「ちょっと待て、なんでそんなことになる?」とご紹介した件の続報です。
2023年12月01日、『貯蓄銀行中央会』が2023年第3四半期の業績を公表しましたが、これがもうヘンとしかいえません。
「純損失:1,413億ウォン」(第1~3四半期累計)だというのです。
韓国では金利が上昇しているのです。基準金利は「3.50%」まで上がっています。普通なら銀行は金利が上がったら利益が増えます。貸出金利が上がるからです。
先にご紹介したとおり、韓国の政治界隈では「(庶民が高金利で苦労しているというのに)銀行はもうけやがってけしからん」といった声が上がり、「棚ぼた税をかけてやる」という無茶苦茶な意見があるほどです。
にもかかわらず、貯蓄銀行では純損失を計上したとしています。
全国79の貯蓄銀行は2023年第3四半期累計「1,413億ウォンの純損失を出した」と集計。しかも、上半期の赤字が960億ウォンでしたから47.2%も赤字が急増しています。
なぜこんなことが起こるかというと、貯蓄銀行が預金金利を上げて、貸出金利の上昇を抑えざるを得なくなったからです。
まず「預金金利」ですが、そもそも貯蓄銀行というのは大手の銀行よりも預金金利が良いとして、一般よりお金を集めます。基準金利が上昇して、預金金利も上昇。大手銀行よりも預金を集めるためには預金金利を、より上げなければなりません。
すると、預金者への利払いが増加してこれが銀行の負担になります。利益が減ります。
当然、貸出金利を上げないといけません。そもそも銀行というのは、預金金利と貸出金利の差分、利ざやを稼ぐという商売です。
ところが、貸出金利が上昇すると、所得脆弱層が飛ぶ危険が増すというので韓国金融当局は貸出金利を上げるなと指導しました。指導というより露骨な圧力ですが、これによって利ざやでの稼ぎも減ったわけです。
貯蓄銀行というのは――大手がお金を借りにくい人にも貸します。でも金利はその分お高いですよ――という商売です。それが阻まれたらどうなるでしょうか?
加えて、貯蓄銀行は大手では借りにくい人、すなわち信用スコアの低い人が借り主なわけで、返済リスクの高い人でもあります。
あまり日本メディアでは報じませんが、韓国は不景気の只中なのです。
案の定、貯蓄銀行の延滞率は上昇しています。驚くなかれ、第3四半期の延滞率は6.15%にも達しました。第2四半期と比較して0.82%ポイント上昇したのです。
お金の返済が遅れるということは、銀行からすれば予定どおり利益が得られなかったことですから、当然業績は悪化します。
韓国金融当局はうまくコントロールしているつもりかもしれませんが、脆弱な借り主の多い貯蓄銀行が傾くことは大問題です。
実際危なくなってきました。「なんだか家がミシミシゆってないか?」そんな感じです。
(吉田ハンチング@dcp)