中国共産党の英語版御用新聞『Global Times』が面白い社説を出しています。
『WTO』において、中国が準備している「投資議定書」にインドが反対しているのは、インドの狭量を表している――というのです。
(前略)
中国商務部(MOFCOM)の何亜東報道官は、木曜日の記者ブリーフィングで、中国の王文濤商務部長が中国代表団を率いて、02月26日から29日までアブダビで開催される『WTO』第13回閣僚会議に出席すると述べた。「中国は、多国間主義と同様に、普遍的な利益をもたらす包括的な経済グローバリゼーションの確固たる支持者である。中国は多国間貿易システムをしっかりと守り、WTO改革に包括的かつ深く参加し、WTOがその役割をよりよく果たせるよう支援する」と述べた。
中国が主導する「開発のための投資円滑化(IFD)」提案は、次回のMC13会合で議論されると伝えられている。
インドは『WTO』でこの提案に反対すると、『ビジネス・スタンダード』紙はインド政府高官の話を引用して水曜日に報じた。MCは『WTO』の最高意思決定機関である。
同報道は、インドが反対する理由として、『WTO』のマンデート(委任された権限のこと:引用者注)の範囲外である「投資」と、「多国間プラットフォームで多国間協定を締結すること」に基本的に反対するという2点を挙げている。
北京にある国際商経学大学の中国WTO研究所のTu Xinquan所長は、インドの動きの背後にある真の理由のひとつは、中国の世界的な影響力拡大に対抗するためかもしれないと『Global Times』に語った。
観測筋はまた、インドが長年抱いてきた “中国恐怖症”の感情にも注目している。
(後略)
インドが中国に反対している理由について、中国の御用新聞は「中国を恐れているから」「中国を封じ込めるため」と述べています。中国が投資についての議定書を『WTO』で通したいのは、もちろんお金がいるからです。
このIFDは2,500億ドルから1兆1,200億ドルの世界的な利益を生み出し、主に貧しい国々に恩恵をもたらすという試算があります。中国はその点を強調しているのです(もちろん自国にお金が投資されたいから推進しています)。
一方で「投資を歓迎する」と自国への投資を促進したいインドが反対しています。
インドが反対している理由は、『WTO』の「全ての加盟国に交渉アジェンダを決定する発言権を与える」という独自性を損なうもの――と見ていることに端を発します。
中国は、自身が主導するIFDのために、あっちでネゴネゴ、こっちでネゴネゴと賛成する国を増やす「多国籍間協議」を重ね、『WTO』加盟国の67%を占める110カ国を参加させました。つまり、『WTO』のプラットフォームを利用して、賛成する多国籍連合をつくり、そこで合意を得ようとしているわけでです。
インドには、この中国の行動が、みんなが等しく議論でき、みんながアジェンダに決定権を持つという『WTO』の特色を損なうものに見えるのです。「プラットフォームを利用した小賢しい行為」と見えるかもしれません。
しかし、中国が、「インドは中国を恐れている」などという、理由になるような、ならないような話でインドを非難するのは――中国のメンツがかかっているからです。
このIFDは、上掲記事にもあるとおり、中国が主導して交渉をまとめてきた経緯があります。2017年から現在まで時間もかかっています。
商務部の王文濤部長も乗り込みますし、これで話が進まなければ、「だ、団の面目、丸つぶれや」になります。ですから、何がなんでもインドの翻意を促したいのです(しかもインドはBRICsの一員)。
すでに『WTO』MC13は始まりました。中国の推すIFDがどうなるか、ぜひご注目ください。
(吉田ハンチング@dcp)