アメリカ合衆国・日本・台湾のいわば「Chip3」は、どんどん半導体戦略を進めています。
先にご紹介したとおり、置き去りが明白になってきたのは韓国。つい最近まで「Chip4だ!」「血盟だ」などと言っていたのですが、このままでは韓国だけ置いていかれる、と焦りを募らせています。
合衆国・バイデン政権は、Chips法に基づいて、半導体企業に対する補助金「527億ドル」を用意しています。
台湾『TSMC』は、竣工が1~2年遅れることが分かっていますが※、合衆国アリゾナ州に400億ドルを投入して先端半導体ファウンドリーを2つ建設する予定です。
※遅延の理由は熟練労働者不足と合衆国政府の補助金遅延などによる。
巨額な補助金があると聞くと動くのが韓国。韓国メディアは「『TSMC』が50億ドルを受け取るというのに『サムスン電子』は何をしているんだ」と嘆く報道を出しています。
半導体生産支援金は直接補助金の場合、全体プロジェクト支出の5~15%。『TSMC』の場合、400億ドルとされますので、15%の最大給付が受けられるとして、15%で60億ドル。韓国メディア、例えば『毎日経済』は50億ドルと見る記事を出しています。
しかるに『サムスン電子』は……と嘆き節になるのが、韓国メディアの面白いところです。
Money1でもご紹介しましたが、『サムスン電子』はもともと170億ドルをテキサス州に造成するファウンドリーに突っ込むという話でした。
ところが、合衆国はインフレに突入してしまいました。人件費や工事費などが高騰。『サムスン電子』は追加で80億ドルを突っ込まざるを得なくなった――という報道が出ました。
すると、計250億ドルです。
本当に投入額が250億ドルで、15%の最大給付が受けられるとすれば、37.5億ドルの給付が受けられそうです。
――ここからが面白いのですが、韓国メディアには、その給付額を「合衆国政府から値切られている」という報道が出ているのです
『毎日経済』から引用してみると以下のような具合です。
(前略)
『サムスン電子』は昨年第2四半期、合衆国政府に補助金を申請した。(中略)
しかし、昨年末、合衆国政府が期待水準を下回る補助金を提示したため、『サムスン電子』は合衆国政府と補助金受給額を引き上げるための協議を進めてきたという。
オハイオ州に半導体製造クラスターの青写真を提示した『Intel(インテル)』は、合衆国政府の補助金と借款を含めて100億ドル以上の支援を受け取ると見られる。
合衆国から提示された補助金の金額が期待より少なかったので、『サムスン電子』が合衆国政府と交渉している――と書いています。
『インテル』は100億ドル以上もらえるというのに……といかにも悔しげな書きようです。
ひとつ想定できるのは、『サムスン電子』が「250億ドル突っ込みます!」というのは、あくまでも表向きの話であって、勘定がかななり膨らませた金額だった場合。このケースなら、合衆国が「うそつけ! このぐらいだろう」と値切るかもしれません。
あるいは「あと80億ドル突っ込む予定なので、計37.5億ドルの補助金をくれ」と交渉。「追加は予定なので駄目」といったケース。
ウクライナ支援の件など支出が巨額になっている合衆国は、できるだけ出ていくお金を抑えたいはずですので、『サムスン電子』のような外国企業への支出をケチっているケースも考えられるでしょう。
ただ、『インテル』は自国企業ですので、『サムスン電子』より待遇が良くても仕方がないのではないでしょうか。
韓国の場合、すぐ「後頭部を殴られた」「血盟だったのではないのか」(「韓国に対する愛はないのか」に等しい)とわめき出しますので、合衆国政府もやりにくいことこの上ないでしょう。
――というわけで、『サムスン電子』への補助金がどうなるのかはまだ分かりませんが、やっぱり合衆国・日本・台湾の「Chip3」で話を進めたほうがいいのではないでしょうか。
韓国の「恨」については、さまざまに説明がされますが、こういうのはいかがでしょうか。
韓国のいう「恨」とは「もらえなかった餅」のことである――と。
(吉田ハンチング@dcp)