現FRB(連邦準備制度理事会)議長であるイエレンさん(ジャネット・ルイーズ・イエレン:Janet Louise Yellen)の任期は2018年2月まで。後任は現理事パウエルさんに決まっており、退任まであと少しです。
■イエレンさんて、こんな人
イエレンさんは、どこにでもいそうな感じのいいおばさん(失礼!)に見えますが、さすがFRB議長に選ばれるだけあって非常に聡明な方で、アダム・スミス賞を受賞する(2010年)ほどの才媛です。
1946年生まれで、1971年にイェール大学でPh.Dを獲得し、1976年ハーバード大学で経済学部の助教授を勤めたのを皮切りに、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの講師、カリフォルニア大学バークレー校のハース・ビジネススクールの教授などのキャリアを積み、1994年(-1997年)には連邦準備制度理事会の理事となっています。
もっとも1977-1978年(31-32歳のとき)に連邦準備制度理事会でエコノミストとして働いた経験がありますので、若いうちからFRBとは縁があったわけです。
2010-2014年、イエレンさんは連邦準備制度理事会の副議長となり、当時の議長であったバーナンキさんを支えました。リーマンショックに端を発する金融危機に際して、金融緩和政策に尽力。2014年からはFRB議長です。特に金融緩和の舵取りについては高く評価されています。
ちなみに、旦那さんのジョージ・アカロフ(ジョージ・アーサー・アカロフ:George Arthur Akerlof)さんも優秀な経済学者。2001年にはノーベル経済学賞を受賞しています。
■FRBはやることはやった! 後は議会の仕事だ!
11月29日、イエレンさんは上下両院による経済合同委員会において証言を行いました。
トランプ大統領の肝いりの税制改革案は財政赤字を増大しかねないと警告されており、「財政赤字によるリスクが大きくなっている」と指摘。「教育の質を上げることや企業投資、インフラ整備などを通じて経済力を向上させるのは、政治家の仕事。FRBの仕事ではない」という主旨の発言を行いました。
また、GDPの増加が過去の景気回復期よりも鈍いのは、
●ベビーブーム世代の引退
●低調な生産性による賃金の伸び悩み
●労働力人口の伸びが減速していること
が原因と指摘し、これらは、
●教育・インフラ・テクノロジーといった分野への投資促進
で解決可能だが、それを促す手段は「議会の守備範囲で対応すべきイシューだ」として議会に「しっかりしろ!」と発破をかけました。
女性の方が現実的といわれますが、こういった指摘はまさに優秀な経済学者として知られるイエレンさんの面目躍如といえるでしょう。イエレンさんはFRB議長を退くと同時に、FRBの理事からも外れることを言明しています。
このような男前な発言ができる女性の退任を惜しむのは、低脳な筆者だけではないと思われますが……。
(柏ケミカル@dcp)