2020年の終わりぐらいから韓国の造船業は「ジャックポット」と評されるくらい受注ラッシュが続きました。
日本語版の韓国メディアでもしばしば取り上げられていますので読者の皆さんもご存じかもしれません。
実はこの韓国企業の受注ラッシュは現在も続いており、イギリス『クラークソン・リサーチ』(造船・海運市況の調査会社)によれば、2021年01~04月のLNG運搬船の受注量は、韓国企業がシェア70.5%という絶好調(44隻中31隻受注)なのです。
受注ラッシュも2021年第1四半期の業績は赤字!
さぞかし業績もいいものかと思いきや、韓国造船大手『サムスン重工業』の2021年第1四半期の業績は赤字でした。以下です。
営業利益:-5,068億ウォン(約-492億円)
当期純利益:-5,359億ウォン(約-520億円)
これが造船業の難しいところで、受注したからといってホイホイ造ってすぐにお代がいただけるという商売ではないのです。大きな船を造るので納品まで時間が掛かりますから、納品して代金の回収があるまで資金が続かないといけません。
今回『サムスン重工業』が赤字に陥ったのは、過去の受注がうまくいかなかったとの反映でもありますが、Money1で先にご紹介したことのある、例のドリルシップ※の評価損などを計上したことも原因です。
また、気になるのは、鉄鋼材の価格が急騰し、そのぶん赤字幅が拡大した――としている点です。
受注ラッシュはいいけど赤字にならない?
読者の皆さんもご存じのとおり、現在鉱物資源の価格が急騰しています。もともと韓国は造船業でも薄利で受注することでシェアを伸ばしてきました。そのため、材料の価格が高騰した場合を想定したマージンを取っていないものと思われます。
現在の受注ラッシュでも恐らくマージンなど取ってはいないでしょう。材料の価格が高止まりした場合、受注したのはいいが納品しても結局赤字でした、みたいなことにならないでしょうか。この点は非常に気になります。
※ドリルシップの在庫があるという呆れる話については以下を参照してください。普通、このような特殊船は受注してからその分だけ建造するので在庫があるのはおかしいのです。
減資と有償増資を推進!
また、『サムスン重工業』は企業としての体力が著しく弱っています。昨年からの四半期毎の営業利益の推移を見ると以下のようになります。
2020年2Q:-7,077億ウォン
2020年3Q:-134億ウォン
2020年4Q:-2,851億ウォン
2021年1Q:-5,068億ウォン
お金が出ていく一方なのが分かります。このため、『サムスン重工業』は無償減資を行い、その上で1兆ウォン(約970億円)規模の有償増資を行う予定なのです。
日本ではあまり報道されませんが、韓国造船大手の『サムスン重工業』は昨年末からの華々しい受注ラッシュの影で会社は弱り続けていたというわけです。
ちなみに、2021年の業績予想も以下のように明るいものではありません。
総売上:6兆9,000億ウォン(約6,693億円)
営業利益:-7,600億ウォン(約-737億円)
赤字の予想です。
(吉田ハンチング@dcp)