2021年05月27日、『中国人民銀行』が非常に興味深いリリースを出しました。北京で「全国外国為替市場自主規制機構」の第7回実務会議を開催しました。
この会議には、30の機関の代表者、『中国人民銀行』の刘国强副総裁、『国家外国為替管理局』の王春英副局長など、為替関連当局のメンバーがそろいました。
リリースから以下に一部を引用します。
(前略)
会議は、現在の外国為替市場は概してバランスが取れていると結論付けた。将来的には、為替レートに影響を与える多くの市場要因や政策要因があり、人民元は上昇または下落する可能性がある。為替レートの動きを正確に予測できる人などいない。
短期であれ中長期であれ、為替レートの不確実性は避けられず、双方向の変動は当たり前であり、政府、機関、個人は、予測や結論に惑わされることは避けなければならない。
通貨バスケットを参照して調整された、市場の需要と供給に基づいた管理変動相場制は、中国の国家条件に適しており、長期にわたって遵守する必要がある。
(後略)⇒参照・引用元:『中国人民銀行』公式サイト「全国外汇市场自律机制第七次工作会议在京召开」
※赤アンダーライン、強調文字は筆者による(以下同)
この部分は、先にご紹介した中国の識者が「中国は変動相場制に移行すべきである」と発言していることへの、中国共産党公式の返歌と考えられます。
現在の当局が管理する事実上の固定相場制を変えるつもりはない、という宣言です。
元高が非常に進行している!
「全国外国為替市場自主規制機構」が概(おおむ)ね訂正とした、元の為替レートを確認してみましょう(ドル元/チャートは『Investing.com』より引用:以下同)。
上掲は日足チャートですが、非常に元高が進んでいることが分かります。先にMoney1で、元安方向へ転換なるか、とご紹介したことがありました(2021年03月10日)。
その後、確かに元安方向に動いたのですが、上掲のとおり、「1ドル=6.5802元」(03月30日/オンショア)を最高値に元高方向へ進行。現在は「1ドル=6.3662元」まで元高が進みました。
ここまで元高であるのに同委員会は概ね適正としています。資源価格の高騰など輸入品が上がって困る中国にとっては、ある程度の元高は容認可能と考えられます。
一方でこのリリースには以下のように書いています。
(前略)
企業は本業に集中し、「リスク・ニュートラル」の概念を確立し、リスク・ニュートラルな「投機」的な行動を避け、人民元の為替レートの上昇または下落に賭けるべきではない。(中略)
金融機関は、企業の「投機」を支援できないだけでなく、「投機」を自ら行うこともすべきではない。銀行の安定した運営に資するものではなく、為替変動の原因にもなる。
(後略)
為替レートへの投機について警告する内容ですが、これは実際に人民元の切り上げに賭けている勢力があって、その圧力が大きいからだと考えられます。『Bloomberg』には「人民元の価値が2015年8月の為替レート改革以前(1ドル=6.1元)レベルまで上昇するという市場の期待感が高まっている」という記事が出ています。
当局が概ね適正と容認している間はいいのですが、元高方向へ行きすぎた場合、元安へ戻すためには当局は「元売りドル買い」を行わなければなりません。すでに複数の技国有銀行が元高進行のペースを緩めるためにこれを行ったと『Bloomberg』が報じています。
元高がどこまでいくのかにご注目ください。
(吉田ハンチング@dcp)