今年もそろそろ韓国メディアでノーベル賞の話題が多くなるシーズンです。これからの時期、韓国ではなぜかノーベル賞受賞者が出ないことについて嘆く記事が毎年紙面を賑わせます。
韓国の唯一のノーベル賞受賞者は金大中
しかし、韓国人がノーベル賞を取ったことが一度だけあります。
ノーベル平和賞:金大中(キム・デジュン)
金大中さんは大統領時代に「太陽政策」を掲げて北朝鮮との緊張緩和に務め、初の「南北首脳会談」を行い、「6.15南北共同宣言」を出しました。
このような成果が評価されてノーベル平和賞受賞となったのです。
しかし、このノーベル賞が「金で買ったものだ」と批判されることがあるのをご存じでしょうか。
賞の選考委員会が賄賂で籠絡されたというのではありません。評価された事績である「南北首脳会談」が実現できたのは、北朝鮮に不当に資金を渡した結果であるという批判です。
今回は、日本ではあまり知られていない、金大中大統領の北朝鮮工作についてご紹介します。
北朝鮮支援に動いた金大中大統領
金大中さんはなかなかの苦労人で、1998年、4回目の挑戦でやっと大統領になりました(しかも一度は政界から引退しています)。
それまでの政権では主敵は北朝鮮だったのですが、金政権ではその姿勢を変更し、北朝鮮に融和的な政策を取ります。
有名なイソップ童話の「北風と太陽」からくる「太陽政策」を称し、北朝鮮を経済的に支援したのです。
大統領に就任した同年の1998年04月には早くも「南北経済協力活性化措置」と公表し、対北支援活動を行う企業についての支援を打ち出します。これにいの一番に乗っかったのが『現代グループ』でした。
鄭周永(チョン・ジョヨン)さん率いる『現代グループ』は、北朝鮮から金剛山の観光事業など7つの事業についての独占支配権を与えられましたが、その代わりに北朝鮮への巨額の見返りも要求されました。
もうかるかどうかも分からない事業によく踏み込んだものですが、この鄭さんは、現北朝鮮となっている江原道通川郡松田面峨山里の生まれで、故郷への想いも根底にあったのかもしれません。
金大統領はこの『現代グループ』の事業をバックアップし、これを北朝鮮とのパイプにしました。
巨額の秘密資金5億ドルが北朝鮮に渡った
2000年06月、『現代グループ』の仲介で初の南北首脳会談が実現されました。
しかし、会談実現の裏で巨額のお金が動いていました。それが明るみに出たのは2002年のこと。
そもそもはアメリカ合衆国議会調査局の「米韓関係報告書」が発端です。
この報告書を基に『月刊朝鮮』という雑誌が「金大中政権は、南北首脳会を実現するために、国家情報員を使い、金正日の海外の秘密口座に4億5,000万ドルを送金した※1」と報じました。
この疑惑は韓国国会でも取り上げられ、国策銀行『産業銀行』総裁を務めた厳洛鎔(オ厶・ナギョン)さんが証人喚問を受けました※2。
厳証人は、疑惑の送金について知っていることを暴露しました。
『産業銀行』から使途不明金の巨額融資を受けようとした『現代グループ』傘下の『現代商船』(現在の韓国海運最大手『HMM』につながる)のこと、「この融資金の返済は政府が行うべきものだ」と言われたこと(つまり『現代商船』を隠れ蓑に政府が巨額資金を使おうとしていた)、さらに秘密裏に融資を受けたいといわれ「書面で要請しろ」と突っぱねたら政府関係者が激怒していると聞いたこと(厳総裁はこれで退職するしかなかった)、など赤裸々な証言を行いました。
後の韓国の特別検察の調査によっても、この送金は事実だと確認されました。
つまり、韓国に唯一のノーベル賞をもたらした「金大中大統領の南北首脳会談」は、金正日総書記に裏金を送ったからこそ実現されたものではないのか、というわけです。
また、ノーベル平和賞を獲得できるように「工作」が行われたことも判明しています。しかも金政権が発足した当初からその工作は行われていました。
国家情報員に在職した人物が、その工作、北朝鮮への資金提供、さらには盗聴などについて暴露し、合衆国に亡命したという事件まで起こったのです。
日本ではあまり知られていませんが、韓国でいまだに根強く「金で買ったノーベル賞」という批判があるのはこのような経緯によるのです。
現在の韓国政府は信用できるのか?
――翻って現在の韓国政府と文在寅大統領です。政権末期となった文政権は躍起になって北朝鮮と接触し会談を持とうとしています。
金大中政権下では、北朝鮮が飢饉で「苦難の行軍」を続けているときに、韓国、しかも政府から裏金が送られました。
現在も北朝鮮は食料難に陥っています。文政権が資金を供与して会談を持ちかければ、北朝鮮が乗ってくる可能性は十分あるといえます。北朝鮮は国際的な制裁下におかれていますので、韓国は表立っての資金供与を行うことはできません。
文政権が金大中時代にならって裏金を送る可能性がある――そうは思われませんか?
※1合衆国議会報告書によれば「5億ドル」。「『現代グループ』が事業の対価として支払ったお金の他に秘密裏に5億ドル(現金4億5,000万ドル + 5,000万ドル相当の現物)が渡った」とのこと。
※2この証人喚問で質問に立ったのは『ハンナラ党』の厳虎聲(オム・ホソン)議員でしたが、これは実は厳洛鎔さんが厳虎聲議員に持ちかけて行われたものと後に分かりました(厳洛鎔さんの回顧録によって)。事実をどうにかして世に知らしめたかった厳洛鎔さんが厳虎聲議員に相談した結果の証人喚問だったのです。
(吉田ハンチング@dcp)