読者の皆さまはすでにご存じかもしれませんが、文在寅前大統領が、2018年に北朝鮮から贈られた「豊山犬(プンサンゲ)」のペア(オスの「ソンガンイ」とメスの「コミ」)を韓国政府に返還する※1として物議を醸しています。
豊山犬は、北朝鮮豊山郡原産とされる狩猟用犬種で、現在では数を減らしており希少種です。北朝鮮から韓国に豊山犬が、韓国から北朝鮮に珍島犬が友好の印として贈られました(於:2018年開催の南北首脳会談)。
7匹の子犬が生まれ※2、先にMoney1でもご紹介しましたが、文在寅さんがミルクをあげたりする様子が大統領府から公開されたりしました。
かわいい子犬の様子は大統領室の広報写真の中でもひときわホッコリとするもので、見るものを和ませました。
なぜ今になってイヌを返すなどというかわいそうなことをするのか、文在寅さん自身は理由を説明していません。
韓国メディアでは、現政権になってから「イヌの飼育費」の給付が行われてはおらず、それに怒った文在寅さんが「それならイヌを返す」となったと推測の記事を出しています。
飼育費は以下のとおりで、月額250万ウォンです。
医療費:15万ウォン
管理雇用費:200万
小計:250万ウォン/月
新政権ができてからは、行政安全部は上記のイヌの管理費の予算を一応作成しました。
規定上は、「大統領が在任期間中に贈られた物」は、生物・無生物、動物・植物などに関係なく「大統領記録物」で国が所有すること――となっています。
しかし、文在寅大統領は、退任前に大統領選挙で当選した尹錫悦(ユン・ソギョル)さんと会談を行った際に、「豊山犬を連れていきたい」という意向を示し、文在寅さんが引き取ることになった――という経緯です。
規定上は、文在寅さんはもう私人なので、文在寅さんが引き取るのはおかしいのですが、2022年初頭に行われる法改正によって、元大統領も「一種の機関」と認められ、飼育のための予算を執行されるはずでした。
しかしながら、2022年06月17日に行政安全部が立法予告したこの「大統領記録物管理に関する法律施行令の一部改正案」は棚ざらしになって、現在に至っています。
4カ月以上も放置されており、さすがに文在寅さんも業を煮やしたのだと思われます。
文在寅さんが国に返還するとしているのは、北朝鮮から贈られたペアのイヌとのこと。生まれた7匹のうち1匹の計3匹(6匹は引き取り手にもらわれた)も文在寅さんが引き取っていたのですが、こちらはどうするつもりなのでしょうか。
確かに国有財産なので、筋からいって「国が保管(飼育)すべき」という話ではありますが、飼っていたイヌを途中で手放すというのは、あまり褒められた態度とは申せません。
また、約束した法改正を行わずに現在まで放置している政府も全く褒められた態度ではありません。もし、前文在寅大統領を政敵とみなしてこれを止めているなら、ロクでもありません。
たとえ北朝鮮から贈られたものであっても、文在寅さんが引き取っていようが、イヌに罪はありません。
理由が分からないので「飼育放棄」と正面きって非難するのも難しいですが、できればイヌたちが幸せに暮らせるように、かわいがって最後まで面倒をみてくれる人の手に渡ってほしいものです。
モノではなく、命なのですから。
※1文在寅さんが返還するとしているのは「ペアの2匹」だけでなく、残った子犬1匹を加えた計3匹という報道も出ています。上掲の『朝鮮日報(日本語版)』の報道が正しければ、子犬1匹がどうなるのかはまだ不明です。
※2北朝鮮から贈られたのはオスの「ソンガンイ」とメスの「コミ」。話がややこしいのですが、7匹の子犬は、文在寅さんがもともと飼っていた「マル」と「コミ」の間に生まれたものです。
※3当記事の写真は全て前大統領府が公開したもの。
(吉田ハンチング@dcp)