「四月危機」の真っ最中ですが、韓国メディアでは連日のように瀕死の「韓国航空会社」について取り上げています。
2020年4月23日、『亜州経済』に「公取委、済州航空のイースター航空の買収承認」という記事が出ました。
『済州航空』『イースター航空』はどちらも韓国のLCC(格安航空会社)。『済州航空』が『イースター航空』の株式の「51.17%」を取得して経営を統合(買収)するのですが、この件で公正取引委員会がGOを出した、という記事です。
なぜ公正取引委員会が判断するかというと、それでシェアが寡占状態になるなど市場に悪影響を及ぼさないかを見極めるためです。
韓国メディアによっては「構造再編」といった言葉で、韓国の航空業界にスクラッチ&ビルドが必要なことを説いています。
新型コロナウイルス騒動で業界が瀕死状態ですので、確かにそうなのですが、今回の統合案件はかなり「安心できないもの」と考えられます。
「瀕死の企業」と「すでに死んでいる企業」の統合
というのは、まずこの『イースター航空』が債務超過に陥っている企業なのです。同記事から以下に引用します。
イースター航空の財務状況を見ると、2019年末の資本総計は-632億ウォンで、2013年から2019年まで毎年資本蚕食状態だった。
昨年は日本の輸出規制による不買運動の影響とボーイング737-MAXの欠陥事態による運航中断などによって、793億ウォンの営業赤字を記録した。
2019年末の有形資産は450億ウォンに過ぎないが、航空機のリース料、空港利用料、航空油購入費、賃金など今年3月末基準の未払い債務額は計1152億ウォンに達する。
※赤アンダーライン、強調文字は筆者による(以下同)
財務状況は最悪です。また、「再生が不可能な会社」と公取委に認定されたからこそ、今回の株式取得による経営統合が認められました(以下に同記事より引用)。
(前略)
公取委は”イースター航空は独占規制及び公正取引に関する法律第7条第2項による「再生が不可能な会社」に認定された“とし、(後略)
公式認定で再生不可能な会社ですから、『イースター航空』は事実上「すでに死んでいる企業」です。
一方の『済州航空』ですが、一応「韓国のLCCの中では1位」とされています。
しかし、先の記事でもご紹介したとおり、このLCC業界1位の企業の財務状況も褒められたものではありません。
『済州航空』は「負債比率:351%」です。
つまり、「借入金などの返却しなければならない資本」が、自分資本と比較して3.51倍あるわけです。
この新型コロナウイルス騒動ですから、韓国航空会社のご多分に漏れず、同社も瀕死の企業です。つまり、『済州航空』は「死にかけている企業」です。
ですから今回の案件は、「死にかけている企業」が「すでに死んでいる企業」を経営統合したものといえます。
これはもう全く安心できません。普通このような案件では、経営が盤石な企業が破綻した企業を経営統合する――といったスタイルになるはずなのです。
それが「できない」ということが、韓国の航空会社の置かれてる状況を如実に示しています。なにせ、フラッグ・キャリアの『大韓航空』※ですらトびそうなのですから。
※一般的にはその国を代表する最大手の航空会社のことです。国旗を背負って飛ぶことからこのように呼ばれます。
(柏ケミカル@dcp)