先にご紹介してから随分時間がたってしまいましたが、いよいよ韓国初の試みがスタートします。
韓国企業の流動性危機(要はお金がないってことです)を助けるために、社債やCP(コマーシャル・ペーパー:約束手形の一種)を買い入れてやる、というものです。
買い入れるといっても、期限日が来たら利子を付けて企業が買い戻さないといけないので、これは融資の一種であって、企業からすればやっぱり「借金」です。
また、これは6カ月限定の措置となります。
テッパンの債券以外も買い入れてくれ!
韓国は「韓国版無制限の金融緩和」なるものを行っていますが、こちらでは国債などの公債や銀行債など、「普通は飛ばないだろう」という債券しか買い入れていません(上記同様こちらも企業から見れば借金です)。
そのようなテッパンの債券ではなく、社債やCPでお金を融通してくれという要望は非常に強く、その仕組みがなければ資金調達できないという企業があまたあるのです。
そこで韓国政府、中央銀行『韓国銀行』が動いたというわけです。2008-2009年の「韓国通貨危機」時にも「社債・CPの買い入れ」は行いませんでしたから、これは韓国史上初のことです。
仕組みはこうです(以下はイメージ図)。
『韓国銀行』は法律上「直接民間企業と取り引きできない建付」なので、「SPV(Special Purpose Vehicleの略:特別目的事業体)」を作ります。
このSPVが企業に融資を行うのです。
SPVの資金規模は10兆ウォン。中央銀行『韓国銀行』が8兆ウォン、国策銀行の『産業銀行』が2兆ウォン(出資1兆ウォン・劣後融資1兆ウォン)を拠出します。
10兆ウォンで足りなければ倍出す! 期間も延長だ!
なかなかの壮挙ですが、問題は「お金は10兆ウォンなんかで足りるのか?」です。
韓国メディアによれば、政府筋としては40兆ウォン規模の「基幹産業安定基金」もあるので、うまく切り分けて利用してほしい――みたいな見解だそうです。
しかし、そもそも「基幹産業基金」は、「基幹産業7つを救う」というお題目だったものが、「航空産業と海運業に絞る」とトーンダウンし、残りの業種はどうするんだというバカバカしい事態になっています。
何度もご紹介しますが、自動車産業は「32兆ウォンの支援が要る」と表明しています。
自動車産業は基幹産業基金の支援対象から外れてしまいましたから、「社債とCPでお金を貸してくれ!」とSPVの方へ向かったら、それだけで10兆ウォンでは全然足りません。他の業種からも社債・CPの買い入れ要請が殺到するでしょうし。
韓国政府も「足りなそう」と薄々分かっているようで、『毎日経済』の記事は以下のように報じています。
政府は、機構を6カ月間運営した後、市場の安定かどうかなどを考慮して延長するかどうかを判断することにした。
政府はまた、コロナ19事態の推移を見守りながら、必要に応じて支援規模を20兆ウォンに拡大する案を検討する計画だ。
⇒参照・引用元:『毎日経済』「10兆ウォン社債・CP買い入れ機構稼働」(原文・韓国語/筆者(バカ)意訳)
※赤アンダーライン、強調文字は筆者による(以下同)
たとえ倍の20兆ウォンになったところで、それでも足りるかどうかは甚だ疑問です。
また、支援規模が「20兆ウォン」に拡大するのは企業にとってはいいことかもしれませんが、政府と韓国銀行がその分を背負い込むことになります。文在寅大統領には「借金王」の名こそふさわしいかもしれません。
(柏ケミカル@dcp)