【短期集中連載】最終回:「レバレッジ動的最小分散」のメリットとデメリット

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年利35%」という驚異的な運用成績を過去10年間たたき出している米国インデックス株(ETF)の投資方法「レバレッジ動的最小分散」。

その実践者である「Dr.鈴木一郎」先生の短期集中連載の最終回となる今回は、実際に運用してみた実体験を元に、この運用方法のメリットとデメリットをまとめます。

<<第4回>>

原理的には「いつ買っても」「いつ売っても」いいはず……

「レバレッジ動的最小分散」とは、アメリカ合衆国株価の代表的インデックスであるS&P500長期米国債の各々の3倍レバレッジ ETF(SPXLとTMF)を組み合わせ、その合成した株価の揺れ(分散)が最も小さくなる比率を計算で求め、その比率になるようにSPXLTMFのリバランスを毎月繰り返すという手法のことです。

レバレッジETFについて株式入門の記事などを見ると大抵、値動きが大変に激しいので短期に限って運用すること、玄人用の株なので素人は手を出さないように、などと書いてあります。

しかしそれを、今まで株を買ったこともないような人間が、長期保有目的として使おうというのですから、かなり変態的な株の運用手法と言えるかもしれません。

この方法の最も大きなメリットは、レバレッジをかけているので、年利35%と、年7%ほどのS&P500の実績を大きくアウトパフォームし得ることです。

またその名にあるとおり、株価の揺れ(分散)をできる限り小さく抑えられます。

船舶で例えれば、SPXLがエンジンとなって利益を引っ張り、一方のTMFが船の安定を司るバラスト役となって株価の揺れを抑える運用方法とも言えます。

株の値動きから凸凹をもし完全に消し去ることができたら、原理的にはいつ買っても、いつ売ってもいいことになります。 

実際にやってみると「なかなかの心労続き」

しかし、実際に運用してみると、これがなかなかしんどい運用方法であることも分かりました。

株価の揺れを最小に、とは書きましたが、株価の上下がもちろん完全に消えるわけではありません。3倍のレバレッジをかけているので、落ちる場合は通常の3倍近い速さで落ちます

前回紹介したように12年ぶりに襲ってきたコロナ大暴落の際には、TMFは急激に上昇しましたが、SPXLの方は目も当てられないような下げを見せました。

また「年利35%」という数字には、運用の諸経費などが入っていません。

証券会社に支払う手数料といった問題も勿論あるのですが、レバレッジ動的最小分散の最大のネックは、税金ではないかと思うのです。

というのは、リバランスの際にSPXLとTMFの比率が大きく変動すると、売却した側の株の含み益に対し税金が発生し、毎回その2割が消えていくことになります。

基本的にリバランスは毎月という仕様なので、年に12回、売ったETF分の含み益の2割が消えるとなると、かなりの痛手となるはずです。

しかし実は、この税金による減損をちゃんと考慮に入れた最小分散のシミュレーションというものをいまだ見たことがないのです。元本に対し含み益が少ないうちはまだいいでしょうが、含み益が大きくなるとリバランスのごとに消えていく税金はかなりの比率を占めるはずです。

それから株だけでなく国債も使う方法なので、金利変動も心配になるところです。

金利が上がると、国債の価格は勿論落ちます。また現在のようにゼロ金利状態になってくると、国債と株の間にあるはずのシーソー関係が失われないかどうかも気になります。

国債と株の間に負の相関関係は、実は常に存在しているものでもなく、21世紀になってから見られる現象なのだそうです。ですから、いつか急に消えたりしないといいですが。

また今回のコロナショック時には、株の下落とともに米国債がちゃんと上がってくれましたが、ゼロ金利下であっても、株の暴落時に国債に向けて資金の流入が起きてバランスを取ってくれるかどうか、ここらも心配ではあります。

さらに米国の証券取引委員会に、3倍レバレッジETFの上場を禁止しようという動きがあることも気になります。射幸心を煽りすぎるということが問題視されているようなのですが、議論はペンディングのままとなっているようで、いまだ結論は発表されていません。

以上のようにメリット、デメリットともに、かなりある手法ではあります。

30万ドル突っ込んでみたが……

2月初旬から兎に角、一挙に30万ドルほどをぶち込みこの方法での運用を始めてみましたが、この記事を書いている10月1日現在、約30万円のマイナスと1%ほどの元本割れ状態にいます。

前回報告したように02月、03月にコロナ禍で米株が大暴落した後、今度は急激に持ち直し、09月03日には540万円ものプラスに転じました。

ですが調子がよかったのはここまで。以後なぜか再び急激に落ちだし含み益は全て吐き出されてしまい、9月24日にはマイナス250万円に。でもそこからまた持ち直して、10月23日時点で約9万円のプラスという感じです。

年利35%どころか、たったの9万円のプラスかよ」と思われるかもしれません。ですが一日に100万円単位で上下することもザラなので、この程度のプラスはどうにでも変わりえます。分散を最小にしてこれだけの値動きなのですから、SPXL単体で運用していたら身がもたないかもしれません。

もはや数字だけが上下に動いているような気分になってきていて、この上下の「波乗り」をある程度楽しめるくらいの気持ちにならないと、3倍レバをかけたETFはやっていられないかもしれません。

次にみなさんに報告する機会がもしあれば、その時は立派な「億り人」になっていたらいいなぁと思ってはいますが、実際はどうなることか……。

人生倍々か、それともこのままグットバイバイか、それは相場の先行き次第! 
ではそれまでバイバイ!

(短期集中連載・了)

<<以下がバックナンバーです>>

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※本稿の情報は、投資判断の参考として投資一般に関する情報提供を目的としたものであり、投資の勧誘を目的としたものではありません。投資に関する最終的な決定は、利用者ご自身の判断で行うようお願いいたします。また、投資の結果について、本稿執筆者、『Money1』は一切の責任を負いません。

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