韓国のメモリー大手『SKハイニックス』が世界的CPUメーカー『インテル』の非揮発性メモリー・ソリューション・グループ(NSG)部門の買収に乗り出しています。ほぼ決まりの事案ですが、『SKハイニックス』側では投資する資金を捻出しなければなりません。同社の資金繰りは大丈夫なのか、という話です。
現在、伝わってくるところによればこの買収について、『SKハイニックス』は以下のとおりの支払いを行います。
2025年:20億ドル(約2兆2,438億ウォン)
小計:90億ドル(約10兆881億ウォン)
ざっくりいえば総額10兆ウォンの投資になるわけです。
この分のお金を工面しなければならないのですが、『SKハイニックス』の財務諸表や業績を見てみますと以下のようになっています。
2019年営業利益:1兆1,266億ウォン
貨幣性資産というのは、保有資産のうち現金、預金、売掛金など現金・資金化する資産のことです。企業ですから日々出て行く鵜運転資金も必要ですし、最初の「7兆8,533億ウォン」、ざっくり8兆ウォンの支払いには全然足りません。もちろんインテルから事業を買うことでその分の売上・利益も出ますが、それよりキャッシュフローを考える方が先です。
李錫熙(イ・ソクヒ)代表はこの買収にまつわる資金繰りを以下のように述べています。
(前略)
「買収資金の半分は保有現金資産と今後稼ぐキャッシュフローを活用して、残りは借り入れを中心とすること」とし「必要に応じて資産流動化も検討している」
(後略)
つまり、約10兆ウォンの支払い、その半分は新たな借金をして賄うつもりです。資産流動化というのは、恐らくABS(資産担保証券)の発行を考えているものと思われます。つまり、保有資産を担保にした債券を発行するわけです。それにしても約5兆ウォン(45億ドル)のABSですから規模は非常に大きいです。
「黒字にできるかな?」が問題
問題は、ABSの発行で資金を調達できたとして、『インテル』でも赤字を出すことがあったNSG部門がうまく回るかです。5兆ウォン分借金が増えたし(その上利払いがある)、その上赤字だった――という結果になるかもしれません。
『SKハイニックス』はこれでメモリー半導体で世界シェアが拡大すると目論み、韓国メディアはこの買収を称賛していますが、実は火中の栗を拾いにいったかもしれないのです。
『SKハイニックス』のお手並み拝見です。
(柏ケミカル@dcp)