今回は、韓国の個人投資家で損失が確定してしまう人が急増しているという話です。しかし、これは起こるべくして起こったことです。
マージンコールが多発する
韓国の金融監督院が株式市場で信用取引を行う個人投資家が急増しており、株価下落による強制ロスカットにかかる人も増加していると警告を発しています。
株式の取引をされない方にはなんのことか分からないかもしれません。
信用取引というのは、証券会社からお金(あるいは株)を借りて手元資金を膨らませて取引を行うことです。
韓国の場合は、証券口座に入れる委託保証金の2倍までの取引が可能です。これがレバレッジを効かせる取引です。
1,000万ウォンあれば2,000万ウォンまでの取引ができるのです。ただし、これは借金をしての取引です。
いいなあと思われるかもしれませんが、株価が下がった場合(空売りを仕掛けているなら株価が上がった場合)には、委託保証金が足りないという事態に陥ることがあります。この場合には、証券会社から「委託保証金が足りませんので入金してください」という通知が来ます。
この通知がいわゆる「マージンコール」(追い証)です。
で、追い証がかかって入金できなければ強制的に証券会社の方で反対売買(トレーダーが買いで入っているなら売り:トレーダーが売りで入っていたら買い)が行われ、そこでその取引は完了してしまいます。
つまり、強制的に損失が確定してしまうのです。これが強制ロスカットです。
トレーダーは、信用取引を行っていた場合、想定外の値動きが起こったら、委託保証金を積むか、自分で反対売買を行うかの二択になるのです。そうしないと強制ロスカットです。
資金が脆弱な個人投資家では、委託保証金を積むことができず、そこで損失確定!となることが多く、これがまさに現在韓国で増えているというわけです。
株価下落局面の中、個人投資家に追い証がかかる事態
まず、その信用取引の額を確認してみましょう。韓国ではこの手元資金を倍に膨らますことのできる信用取引が急増しています。
個人投資家の信用融資残高
2020年03月時点:6兆6,000億ウォン(約6,204億円)
2021年09月13日時点:25兆7,000億ウォン(約2兆4,158億円)⇒参照・引用元:『韓国 金融監督院』公式サイト
コロナ禍で株価が大暴落し、底をつけた2020年03月、つまり株価の急上昇の起点となった時期には信用取引の融資残高は「6兆6,000億ウォン」でした。
これが現在「3.9倍」の「25兆7,000億ウォン」にまで膨らんでいるのです。
反対売買の金額は、2021年08月には「84億8,000億ウォン」(約8.0億円)に達しました。これは2021年の最高額です。
「07月:42億1,000億ウォン」(約4.0億円)でしたから倍に膨らんだわけです。これは、以下のとおり株価が下落局面になっていることから来ています(チャートは『Investing.com』より引用/月足)。
上掲はローソク足1本が1カ月の値動きを示す「月足」ですが、ご覧のとおり、07月、08月(そして09月)とKOSPIは下落を続けています。
この下落の中で、委託保証金が足らなくなった個人投資家が次々とマージンコールの餌食なっていると推測できるのです。
で、この強制ロスカットはさらなる株価の下落を生みます。
なぜかというと、(買いから入った場合)反対売買を行うと株式がそこで強制的な売りになるわけで、これが大量に出ると、どんどん株価を下げる効果があるのです※。
つまり、株価下落が続くと、追い証にかかる「信用取引を行う個人投資家」がさらに増え、これが株価をますます押し下げるというわけです。
さて、韓国の株価、また個人投資家の資産はどうなるでしょうか。ご注目ください。
※売りから入った投資家が多い場合には逆に株価が上がる現象が見られます。これが「ショートスクイーズ」です。
(吉田ハンチング@dcp)