韓国の金融当局による融資規制の余波が懸念されています。
韓国当局による貸し出し規制
韓国では家計負債が異常な速度で増えていますので、韓国政府はこれを止めることに必死です。
『韓国銀行』は金利を上げてお金を借りにくくしていますし、韓国政府は金融委員会から指令を出して、金融機関に新規融資を抑えるように指導しています。
先にご紹介したとおり、第1金融圏に属する市中銀行には、2021年の家計への貸し出しの増加率を「5~6%」に抑えるように指示しており、そのため5大銀行の年末までの家計融資限度は13兆5,500億ウォン(約1兆8億円)しかありません。
5大銀行の家計貸し出し増加率は以下です。
『国民銀行』:5.06%
『新韓銀行』:3.16%
『ハナ銀行』:5.23%
『ウリィ銀行』:4.24%
『農協銀行』:7.14%
『国民銀行』と『ハナ銀行』はすでに5%を超えています。『農協銀行』はすでに7%超えなのでもう貸し出し不可能です。実際、『農協銀行』はすでに不動産関連の貸し出し窓口を閉めました。残っているのは『新韓銀行』と『ウリィ銀行』だけです。
先にご紹介したとおり、当局の規制は市中銀行だけではなく、インターネット銀行などにも及んでいます。
規制は実需を阻害しないのか?
五大銀行の融資可能残高「13兆5,500億ウォン」では全く資金需要を満たせないと推計されています。
問題は、金融当局の規制が「実需」をも阻害するのではないか、という点です。
当局の思惑としては「借金をしてまで投資するのを止めさせたい」であったはずです。しかし、このまま進行すると「投資ではなく家を買いたい」といった資金需要までもなで切りで止めてしまうことになります。
切り分けがとても難しいのですが、あくまでも実需を阻害しないで資金の流れを制限しなければならないのです。
ここで下手を打つと、(これまで不動産価格を膨らませてきた資金の流れが断たれるわけですから)急速な資産価格の調整が起こって阿鼻叫喚の地獄絵図になります。
慌てる金融当局「チョンセローンはOK」と言い出す
筆者が思いつくようなことは、とっくに識者の皆さんは気付いていらっしゃるわけで、韓国でも「当局の規制が実需を阻害してはならない」という声を上げています。
もちろん金融当局も理解しているのです。
貸し出し可能金額がひっ迫していることが分かった当局は、ここにきて態度を軟化させました。
2021年10月14日、コ・スンボム金融委員長は金融投資協会で開催されたセミナーで記者に対して、
「実需要者が利用するチョンセローンが中断されることがないように、第4四半期中はチョセンローンの限度と総量を管理する上で柔軟に対応する考え」
「チョンセローンの増加により6%台以上に増加しても容認するようにする」
と述べたとのこと。「緩めるのかよ」という話ですが、これはあくまでチョンセローンについて言及したのみ。これ以外での貸し出しを絞る方針に変更はないようです。
年の瀬に向かってお金が借りられなくて困る人が多く出そうなのですが、韓国当局による「もうお金は貸せませんよ」という規制はどのような状況を現出させるでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)