もう何度でも言いますが、韓国は貿易収支が減少してくると危なくなります。
貿易収支こそが韓国にとって外貨準備――外貨を積むための大本であり、経常収支が黒字になるるのは貿易収支の十分な黒字があってこそだからです。
ちなみに経常収支で黒字なることはそんなに重要なの?と思われるかもしれませんが、非常に重要です。
経常収支は、物品・サービスの輸出入を計上しますので、その国の製品やサービスなどがいかに他の国からニーズがあるかを反映しています。また経常収支には外国に投資した分の配当なども計上されます。経常収支が黒字であることは、このような物品・サービス、投資のアガリなどで外国からお金が入ってきていることを意味しています。
経常収支が赤字ですと、お金が外国に出ていっているということです。
現在、鎖国をしている国でもなければ、外国から何かを輸入せずに済むということはありません。出ていくばかりですと、いつか決済するための外貨がなくなっておしまいです。
つまり、経常収支は黒字でなければなりません。アメリカ合衆国のように巨額の経常収支赤字を出しても巨額の資金流入でファイナンスできる国以外は。
韓国の貿易収支の減少は危ないサイン
――で、韓国の経常収支。
韓国は日本のように貿易収支が赤字になっても第1次所得収支(外国に投資した分のアガリ)で大きな黒字になるので大丈夫という国ではありません。韓国はそちらに移行する途中ともいえ、それが達成されないうちに韓国の夏は終わりました。
ここからは縮小していく経済でいかに長く耐えるかの戦いです。
それはともかく、ここのところの貿易収支の縮小に危険信号を見る方々はさすがに韓国の中にもいらっしゃって、あの『全国経済人連合会』からもリポートが出ました。
以下にリポートの冒頭部分を引用してみましょう。
最近、貿易収支赤字に対する懸念が高まった中、原材料価格の急上昇による輸入物価上昇率に比べて相対的に低い輸出物価が貿易収支赤字幅を拡大するという分析が出た。
(後略)
ここでの指摘は至極当然の結論を述べています。
つまり、貿易収支(貿易のもうけ)が縮小するのは、資源価格が急騰して輸入金額が急上昇しているから。また、輸出金額が伸びた伸びたと喧伝するのに貿易収支が縮小するのは、輸出金額の伸びよりも、輸入金額の伸びの方が大きいからです。
そのような現象が起こるのは、輸出物価よりも輸入物価の方がより上がっているからです。
『全国経済人連合会』は「輸出物価、輸入物価」、その「格差」について以下のとおりとしています。
2021年01月
輸出物価指数:12.4%上昇
輸入物価指数:19.5%上昇
上昇率の差:7.2%
(輸入物価上昇率 - 輸出物価上昇率)※対前年同月比の増加率/四捨五入しているので引き算しても数字は合いません
『全国経済人連合会』が注目したのは、この「7.2%」、輸出・輸入の物価上昇率の格差です。
2021年にはこの格差は「3.4%」で済んでいたのですが、上掲のとおり2022年01月にはこれが「7.2%」まで拡大しています。
韓国の「今そこにある危機」!
実は、この格差が拡大すると「貿易収支の黒字」が危なくなるのです。
2008年は2000年代で唯一貿易収支が赤字となった年でしたが(ただし通関ベース)、このとき「輸入物価指数 – 輸出物価指数」の格差は「12.6%」もありました。
ここからがこのリポートの白眉ですが、『全国経済人連合会』は、「貿易収支」と「輸出・輸入の物価上昇率の格差」の相関を計算しています。それによれば、相関係数は「-0.63」。
貿易収支と輸出・輸入の物価上昇率の格差には「負の相関」があります。
つまり、輸出・輸入の物価上昇率の格差が大きくなれば、貿易収支は減少するのです。
これは、韓国が今まさに貿易収支が減少する危険な位置に立っていることの証左です。01月時点で「7.2%」もあるのですから。
文大統領がやっちゃったので間に合わない
以下に同リポートの結びの部分を引用します。
『韓国経済研究院』は、最近の国家負債増加、外国為替保有高(外貨準備高のこと:筆者注)減少*の状況下で貿易収支の赤字が可視化される場合、韓国経済の対外信用が下落する可能性が高まると指摘した。
『韓国経済研究院』イ・テギュ先任研究委員は、
「今後、合衆国の金利引き上げが外国人投資資金流出とドルウォンの為替レートの急上昇につながり、資本市場が大きく揺れる可能性がある」
と警告し、
「対外信用が下落する可能性を遮断するためには、財政健全性確保、投資条件改善、労働市場の柔軟性確保など、経済のファンダメンタルズを強化するための努力が必要だ」
と主張した。
貿易収支の赤字が顕在化した場合、韓国の国際的な信用が下落する可能性は確かにあります。また、資金流出、通貨安方向へのさらなる進行も十分あり得ます。
しかし、今から「財政健全性確保、投資条件改善、労働市場の柔軟性確保」を行っても恐らく間に合わないでしょう。文大統領がすっかり「しでかした」後ですので。
(吉田ハンチング@dcp)