先にご紹介した、韓国政府の「軟着陸のための特別優遇金利ローン」に皆さんが殺到して大変なことになっています。
まさに高金利地獄の韓国
韓国では住宅ローンで変動金利を選択する人が多いのですが(統計を取る次期によって異なるがほぼ70~80%)、ご案内のとおり、韓国の金利は上昇の一途をたどっています。
住宅ローンの金利の当然上昇し、これによって金利負担が増加。韓国メディアの報道によれば「収入の6~7割が月々のローン支払いに消え、このままでは食べていくことができない」という人が増加しています。
先にご紹介したとおり、韓国金融委員会は、合衆国の金利上昇に追随して2023年01月13日に基準金利をさらに0.25%上げました。これはインフレ対策のためでもありますが、当然、変動金利を押し上げ、ローン返済に苦しんでいる人の生活をさらに圧迫することになります。
まさに高金利地獄です。
不動産市場をハードクラッシュさせないぞ
生活が圧迫された人がデフォルトして異常に膨れ上がった家計負債の爆弾に点火することも考えられますが、それだけではなく、住宅ローンに苦しんだ人が購入したマンションを売りに走り、売りの連鎖を呼んだらどうなるでしょうか?
ただでさえ不動産バブルの崩壊が懸念されているのに、マンション価格の下落が津波になる可能性があります。そうなったら誰も止められません。
そのため、韓国政府は今支払っている住宅ローンを低金利に乗り換えることのできる「特別優遇金利ローン」を設けることにしたのです。以下の記事でご紹介しましたが、低金利といっても「4.65~4.95%」※1、「4.75~5.05%」※2といったものです。
しかし、うまく条件が合えば最大「90bp=0.9%」の優遇が受けられますから、3%台の住宅ローンとすることが可能なのです。
市中銀行の住宅ローン金利が「6%」に達するような状況ですので、ローン支払いで二進も三進もいかなくなった人にとっては福音です。
この「特別優遇金利ローン」は、不動産市場をハードクラッシュさせないぞという韓国政府の意思表明です。
2023年01月11日に金融委員会から「特別優遇金利ローン」のプランが公表され、01月30日から受け付け開始だったのですが、どうなったかというと……。
高金利で青息吐息の人が多すぎる!
『韓国住宅金融公社』によると、2023年01月30日~02月01日のわずか3日間で「7兆ウォン」も集まったのです。初日の1日だけで「3兆ウォン」超え。
以前にも「安心転換ローン」という同じような主旨の借り換え用ローンが設けられたのですが、こちらは人気は今ひとつでした。
2022年09月から3カ月間の受け付けで「9兆4,787億ウォン」で供給限度額「25兆ウォン」の37.9%しか申し込みがありませんでした。
今回は、この「安心転換ローン」よりはるかに出足が好調です。というより好調過ぎます。
理由は簡単で、先の「安心転換ローン」よりも乗り換えのための規制が緩いからです。
全ての債務の年間元本が年間所得の40%を超えても申し込みできますし、住宅担保ローン比率(LTV)と総負債返済比率(DTI)の規制のみの適用されますが、市中銀行の担保より限度額が2億ウォン近く大きくなるケースもあります(つまりより高い住宅を購入した場合でも適用され得る)。
「一般型」ローンは所得制限がありませんし、住宅価格の上限も9億ウォンまでと手厚くなっています。
「優遇型は、住宅価格が6億ウォン以下、夫婦合算所得1億ウォン以下などの条件を満たさなければなりませんが、(条件が合えば)金利を年3%台まで下げることができます。
一般型も年4%台前半からで中盤で市中銀行の金利よりは安いのです。
先の「安心転換ローン」の不人気の原因を見極めて、今回の借り換え用ローンは条件を緩めて対象をぐっと広げたのです。
このような尹錫悦(ユン・ソギョル)政権の柔軟な姿勢は高く評価できますし、また、これはいかに政府が不動産市場のハードクラッシュを懸念しているかの証明です。
しかし、集まり過ぎです。この特別優遇金利ローンの予算は「39兆6,000億ウォン」。わずか3日間で約18%が埋まってしまいました。
韓国でいかに高金利にあえいでいる人が多いのかを証明する数字だといえるでしょう。
※1住宅価格6億以下&合算所得1億以下の場合
※2住宅価格6億超過または所得1億超過の場合
(吉田ハンチング@dcp)