2023年10月18日、中国の統計局は、2023年第3四半期のGDP成長率が対前年比で「+4.9%」と公表しました。しかし。この数字はまともに信じられません。
先にご紹介したとおり、同じ統計局が公表した中国の工業企業※の総売上は、対前年同期比でヨコヨコ(01~09月:0.0%)、営業利益の方はずーっと前年割れ(01~09月:-9.0%)です。
※指定規模以上の工業企業についての統計です。指摘規模以上というのは「年間の主な事業収入(売上)が2,000万元を超える産業法人」を指します。
中国は、これまで①輸出②不動産開発③内需という3つ首で高い経済成長を遂げてきました。
上掲の統計は①の輸出に関わるデータです。対前年同期比で企業の売上が変化なし・営業利益は減少しているというのに、GDPが対前年比で成長しているというのはおかしくないでしょうか。
では、中国経済の屋台骨を支えてきた②の不動産セクターはどうでしょう?
同様に中国の統計局が2023年10月18日に公表した「2023年01~09月の全国不動産市場の基本状況」というデータがあるのです。以下をご覧ください。
01~09月の全国の不動産開発投資は8兆7,269億人民元で、前年同期比9.1%減。うち住宅投資は6兆6,279億人民元で、同8.4%減。
01月~09月の不動産開発企業の住宅建設面積は8,156万8,800平方メートルで、前年同期比7.1%減少した。
そのうち、住宅建築面積は5億7,425万平方メートルで、7.4%減少した。
住宅新築面積は7億2,123万平方メートルで、23.4%減少した。
うち住宅新築面積は5億2,512万平方メートルで23.9%減。
住宅竣工面積は4億8,705万平方メートルで、19.8%の増加。このうち、住宅の完成面積は3億5,319万平方メートルで、20.1%増加した。
不動産開発投資の金額は、01~09月累計で対前年同期比9.1%も減少しています。
住宅建築面積は7.4%の減少。新築面積はなんと「23.9%」も減少しています。
※竣工面積が増えているのは、先にご紹介したとおり「お金を払ったのに住宅が完成しないと怒る人が増加して社会不安が醸成される」のを恐れた当局が、「とにかく完成させろ」と指導しているからです。
上掲は、「不動産開発投資」金額の「対前年同期比の増減」推移ですが、2023年01~02月は「-5.7%」で済んでいたのに、「01~03月」「01~04月」……と時間がたつにつれ右肩下がり。
「01~09月」はついに対前年同期比で「-9.1%」まできました。
対前年同期比でどんどん不動産投資金額がマイナス方向に進んでいるというのに、不動産市場が良くなっているわけはありません。
つまり、中国経済を支えてきた②の不動産セクターは状況が悪化しているのです。
――なので、やっぱりこう問わないといけません。
「中国の2023年第3四半期のGDP成長率は前年比4.9%増加した」は、本当ですか? 不動産セクターがどんどん悪くなってるのに?
(吉田ハンチング@dcp)