米軍の鼻血ブー作戦ではATACMSを発射。金正恩が巻き込まれても別に構わん――だった

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ロシアと北朝鮮が密着し、面倒くさい状況になってきました。

日本ではあまり知られていませんが、アメリカ合衆国は「北朝鮮を爆撃でぶっ飛ばす」作戦を立案しては「やっぱやめとこ」を続けてきました。1994年のクリントン政権のときは真剣にやる気だったのに、韓国の金泳三大統領の大反対にあって頓挫。

トランプ大統領のときも、Money1でもご紹介したとおり、マシュー・ポッティンガー(Matthew Pottinger)が爆撃を進言しています。いや、そもそもトランプ大統領自身が軍に作戦立案を指示していたことが分かっています。

この2017年の攻防を、井上智太郎先制の著書『金正恩の核兵器』から引用してみます。

(前略)
核戦力に詳しい米ピューリッツアー賞ジャーナリスト、フレッド・カプランの著書『The Bomb』(2021年)によると、トランプの国連演説(2017年09月19日:引用者注)のころには米軍の統合参謀本部と太平洋軍司令部はトランプの指示により、北朝鮮に対する先制攻撃計画を立案していた。

計画によると、北朝鮮がミサイル発射の兆候を見せれば、第1段階の対処として在韓米陸軍の地対地戦術ミサイル「ATACMS」で発射台を破壊する。

すでに発射された後でも発射台を破壊する。仮に北朝鮮指導部がそこにいて巻き込まれてもかまわない。

限定的な攻撃により北朝鮮を抑え込むことを狙う計画で、米メディアでは「ブラディー・ノーズ(鼻血)作戦」とも呼ばれた。

しかし立案した軍当局者らを含めて、金正恩が警告の前におとなしく引き下がるかどうかは確信が持てなかった。

むしろ北朝鮮が韓国や日本を標的に報復、米国は反撃を迫られ、衝突は制御不能に陥り全面戦争に発展する可能性の方が大きいとみていた。このため軍高官らはトランプに対し「水爆使用を含め最後まで戦い抜く用意がなければ、なんの行動もとるべきでない」と諭したという。

2017年3月以降、ATACMSは即時発射体制に置かれていた。
(後略)

強調文字、赤アンダーラインは引用者による。
⇒参照・引用元:『金正恩の核兵器』著:井上智太郎,筑摩書房,2023年04月10日 第一刷発効,pp117-118

トランプさんが2017年09月19日に行った国連演説は、金正恩さんを「ロケットマン」と揶揄し、「北朝鮮を完全に破壊する以外に選択肢がなくなる」とまで述べた激烈なものでした。

北朝鮮はこれに対して09月21日付けで「米国の老いぼれ狂人を必ず火で制するであろう」という金正恩本人の声明を出しました。

ATACMSが即時発射体制を整えたのが03月で、国連演説が09月。トランプさんは在韓米軍が準備万端、第一段階の爆撃体制を整えてから、ロケットマンを脅しにかかったわけです。

2024年11月の大統領選挙でトランプさんが大統領に返り咲いたら――北朝鮮とはどう対峙するでしょうか。

追記
「やる男」マシュー・ポッティンガーさんは、2024年06月11~13日、『民主主義防衛財団』(Foundation for Defense of Democracies:略称「FDD」)チャイナ・プログラムのチェアマンとして台湾を訪問。訪台した同財団一行は、蔡英文総統、国家安全会議の徐斯儉副秘書長、外交部の李淳政務次長、国防部、海洋委員会海巡署などと会談を行いました。マシュー・ポッティンガーの名前だけでも覚えて帰ってください。

(吉田ハンチング@dcp)

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