FRBがテーパリングから資産の圧縮に向かう動きを見せており、それは09月から始まるといわれています。この資産圧縮によってナニが起こるでしょうか? 市場はすでに「バランスシートの縮小問題」を織り込んで動き始めていますが、今回は昨日の記事に続き、FRBの動きについてご紹介します。
■債権の償却が始まると……
2008年のリーマンショック、その金融危機を乗り切るためにFRBは金融緩和の一環として、米国債、MBS(住宅ローン担保証券)、エージェンシー債などの債権の買い取りを進め、そのためFRBのバランスシートは拡大の一途をたどりました。FRBが抱えている債権は約4.5兆ドルに達するといわれます。
それだけではなく、これまでFRBは償還期間を迎えた債権に対して再投資を行い金融緩和を続けてきました。これが09月以降は再投資を行わず、償却を進めていくことになります。まず米国債ですが、償還が進み、FRBの保有残高が減ってくると金利を押し上げる効果を生みます。
アメリカの金利上昇が起こると、日本が金利を上昇させることができないため、日米での金利格差が広がります。すると、当然金利の大きなところにお金が集まりますので「ドル高円安」を生じさせることになるのです。
ただし、この金利格差にだけ注目していると足元をすくわれる可能性があります。金利が上昇すると「利上げ」を行いにくくなるというデメリットもあるのです。利上げが行いにくくなると「ドル安円高」になる可能性が高まります。
結局どっちなんだという話になりますが、FRBに求められるのはその辺りの絶妙なさじ加減です。実際、4.5兆ドルを10年余りをかけて2兆ドルぐらいにまで縮小させる計画ですが、株式市場などの動向を常に細かく見ながらのコントロールが必要になのです。
■MBSが問題! 住宅市場を冷え込ませないでクリアできるか!?
また米国債よりもMBSの償却の方が問題だ、とする識者の声もあります。そもそもFRBは米国債をもともと多く保有していますので、バランスシートの縮小においてはMBSをもっぱら償却することになるといわれているのです。
そもそもMBSは償還期間が非常に長いのが普通です。これを償還期間まで保有していると償却するのに時間が掛かって仕方がありません。ですから手っ取り早く売却するといった手段を講じることもFRBは視野に入れているのです。
しかし保有しているMBSが巨額ですから、売却による「金利上昇」が想定されます。もし急激な金利上昇が起これば、住宅市場を冷え込ませる可能性があります。現在アメリカの住宅市場はかなりの活況を呈していますので、これに冷や水をかけることはさすがに難しいでしょう。ここでもやはりFRBのうまい舵取りが求められるのです。
(柏ケミカル@dcp)