新型コロナウイルス騒動で気持ちも暗くなりがちですが、韓国の中央銀行『韓国銀行』が2020年06月29日公表したリポートは、韓国メディアをいたく刺激したようです(本稿末のリンクを参照ください)。
『毎日経済』には「韓銀、リポートに示されたコロナ発『韓国経済のディストピア』」、『亜州経済』には「韓国銀行『新型コロナ影響で韓国の潜在成長率下落速度が速まる』」という、どうにも暗い記事が出ました。
『毎日経済』の記事の冒頭部分がまとめになっているので、以下に引用します。
『韓国銀行』は、コロナ19以降韓国の潜在成長率が悪化し、物価上昇率が鈍化すると予想した。
脆弱階層の所得減少が長期化して雇用の二極化が進むなど、経済全体に 「不可逆的な」変化が起こるだろうという分析だ。
⇒参照・引用元:『毎日経済』「韓銀、リポートに示されたコロナ発『韓国経済のディストピア』」
※赤アンダーライン、強調文字は筆者による
『韓国銀行』によれば、韓国の潜在的な経済成長率は「2%」とされるがそれが鈍化し、潜在成長率を生かせない状況になるのではないか、というのです。
また、資本面では企業の投資が鈍り韓国国内にお金が落ちにくくなると予測しています。
これはもっともな予測です。
これまで投下した資金の回収が新型コロナウイルス騒動のために遅れるわけですから、新規に投下する資金も減るでしょう(少なくとも後ろにずれる)。
低インフレ傾向が続くとも予測していますが、低インフレではなく「デフレ傾向」というべきでしょう。
先にご紹介したことがありますが、韓国の「コア・インフレ率」※1はずっと低下し続けています。
⇒参照・引用元:『TRADING ECOMOMICS』「韓国-コアインフレ率」
https://jp.tradingeconomics.com/south-korea/core-inflation-rate
上掲のように、すでに「これでデフレにならない方がおかしい」という状況で、今回の新型コロナウイルス騒動によって物価の低下傾向に拍車がかかるのです。
というのは、今回の騒動で貯蓄を優先する人が増え、みんながお金を使わない傾向が強まりますから(すでにその端緒が現れている)、消費を引き出すために物の価格を下げざるを得ません。すると物価は下がり、景気が悪いですので、デフレ・スパイラルに入る可能性が高いわけです。
デフレ・スパイラルというのは、物価の下落と需要の減退が同時に進行することをいいます。
こうなると、ただでさえ貧富の格差が大きい韓国社会はさらにその傾向が強まります。
なぜかというと、売上が上がらないので企業が固定費たる人件費の削減に乗り出すからです。企業は人員のカット、給与削減に動きます。
安定した高額な収入を得ている人は大丈夫かもしれませんが、失業した人は元の収入に復することが難しくなるのです。景気が悪いと企業は人を安価に雇用しようとしますので。
――というわけで概観しただけでも、『韓国銀行』の公表したリポートは韓国メディアならずとも「ディストピア」と書きたくなるような暗鬱なものです。
日本はぜひ巻き込まれないようにしないといけません。
⇒参照・引用元:『韓国銀行』公式サイト「【プレス参考資料】コロナ19以降の経済構造の変化と私たちの経済への影響」
http://www.bok.or.kr/portal/bbs/P0000559/view.do?nttId=10058989&menuNo=200690
※1面倒くさい方は飛ばしていただいて大丈夫ですが、コア・インフレ率とは「物価」を評価するために、変動の大きい食品やエネルギー関連を除いた指数です。
(柏ケミカル@dcp)