ノーベル賞シーズンが今年も終わり、いよいよ年末感が高まっております。ノーベル賞は基本自然科学が対象で、物理学賞、化学賞、生理学・医学賞こそが本道であって、「文学賞」「平和賞」「経済学賞」などはノーベル賞ではない、と指摘する方もいらっしゃいます。
何度も取材させていただいている日本最強のデバンカー・皆神龍太郎先生は、ノーベル賞の取材で実際にストックホルムまで行った経験をお持ちですが、文学賞・平和賞・経済学賞については疑問を呈しておられます。
中でも経済学賞は、ノーベル賞といわれますが、正確には「アルフレッド・ノーベル記念スウェーデン国立銀行経済学賞」であって、いかにも付け足しのノーベル賞という態なのです。
仕方ないことですが、経済学には理論を実験で証明できないという不利があります。経済学にもさまざまな理論が生まれますが、それは観測から導かれたものであって、しかもその時代・その時点で特有の現象を観測しただけに過ぎないのです。
経済活動は時間軸に沿って常に変動するもので、全く同じ現象が観測できることはありません。ですので、観測から導かれた理論も「正しいだろう」と推測はできても「真理であると確定」できません。「真理のようだ」と思えるだけです。
これは経済学が自然科学と呼べない大きなポイントです。経済学者が「理論上はこうなるハズだから、このような政策を取るのが正しい」といくら述べても、その信憑性は実際にやってみないと分からないのです。経済学の理論は実験室で試すことができません。
2008年のリーマン・ショックから10年がたち、世界経済は回復したといわれます。各国の中央銀行担当者は「危機は終焉を迎えた」と考えるようになっています。しかしながら、その中央銀行のバランスシートは膨れあがっており、これまでの金融緩和から引き締めに舵を取るとき、何が起こるかは正確には誰も予見できません。
経済学者はヤイヤイ言うでしょうが、実際にそれが正しいかどうかはやってみないと分かりません。
「それ見たことか」と予測が当たって鼻高々になる識者もいれば、世の中の人が自分の見当外れだった予測を早く忘れてくれないかな、と身を小さくしてやり過ごすような識者もまたいるのですから。
(高橋モータース@dcp)