韓国政府がここにきて「雇用保険」の拡充について声高にアピールしています。
韓国メディアも「社会的セーフティーネットの整備を急がなければ!」という調子で報じています。例えば、韓国メディア『毎日経済』の2020年07月20日付けの記事では、以下のように書いています。
李載甲(イ・ジェガプ)雇用労働部長官は20日、政府世宗庁舎で「韓国版ニューディール総合計画」の中で「セーフティネットの強化」分野に関するブリーフィングを開き、「2025年には、すべての仕事を国民が雇用保険の保護を受けることができるようにする」と明らかにした。
全ての就業者を対象とする全国民の雇用保険制度を2025年に完成させるというものである。
この時から誰もが仕事を失った際には失業給付を受けることができるようになる。
2025年には雇用保険の加入者は約2,100万人に達すると、政府は推定している。
これは、全体就業者で兵士、公務員、私立学校の教員など雇用保険の適用対象ではない人を除いた数値だ。
⇒参照・引用元:『毎日経済』「『全国民の雇用保険』2025年に完成し…就業者2千100万人登録」(原文・韓国語/筆者(バカ)意訳)
※赤アンダーライン、強調文字は筆者による
雇用保険代を広く集めないと基金が枯渇する!
文在寅大統領がぶち上げた「韓国版ニューディール」でも「セーフティーネット」に予算が割かれており、それ自体は結構なことかもしれませんが、急いでいるのには理由があります。
失業給付の源泉である「雇用保険の基金」が枯渇しそうなのです。
日本でも同じですが、失業したときに「失業給付」(「失業手当」「失業保険」と呼ばれるものです)が受けられるのは、就業しているときに「雇用保険料」を支払っているからです。
サラリーマンなら給料から天引きされているはずでですね。これが集まって基金としてプールされており、失業給付や育児休業給付など、被保険者の生活水準を維持するために使われるのです。
で、韓国の場合はそもそも被保険者の数が少なく、基金のお金も多くありません。
↑の記事でもご紹介しましたが、2020年03月末時点で雇用保険基金には「7兆2,458億ウォン」(約6,521億円)※1しかなかったのです。
新型コロナウイルス騒動で失業者がさらに増え、失業給付(韓国の言い方では「休職給付」)の申請者もさらに増加。
結果、雇用保険基金は「6兆5,000億ウォン」(約5,850億円)にまで減少しています。これが、2020年末には「5兆ウォン」(約4,500億円)にまで下がると見込まれているのです。
さらに実体経済の低迷が持続した場合、雇用保険を維持できなくなる可能性が高まります。
ですので、ここにきて慌てて雇用保険の被保険者数を拡大しようとしているのです。
問題はこれが裏目に出た場合です。
上掲記事に「この時から誰もが仕事を失った際には失業給付を受けることができるようになる」なんて書いてありますが、失業給付を受けることができる人の数も拡大するわけで――就業している人が支払う雇用保険料で賄えなかったらどうするのでしょうか。
※1ウォン円換算は2020年07月21日の「1ウォン=0.090円」を用いました
(柏ケミカル@dcp)