台湾『TSMC』は2021年04月、中国・南京の半導体工場を拡張すると発表しました。自由主義陣営国からは「今、中国に半導体工場を造って大丈夫なのか」と懸念の声もあったのですが……(台湾国内からも批判あり)。
実は、この件について中国では『TSMC』に対する反感が高まっています。中国に半導体工場を建設となれば中国で喜ばれそうなものなのですが、事態は逆になったのです。
というのは、『TSMC』が中国に拡充する半導体工場というのは、世界的に不足している車載用半導体を量産しようというもので、
です。その一方で、『TSMC』がアメリカ合衆国に建設する工場は、
なのです。半導体の製造は微細プロセスになればなるほど技術が求められ、難易度が高くなります。『TSMC』が中国に拡充するという施設は、少なくとも2世代前の技術を用いたもの(合衆国は7nm以下のプロセスに関わる技術を中国に渡すことを規制しています)。
余談ながら、先日、IBMが最先端の「2nmプロセス」について公表しましたが、実際にこれで半導体が量産されるようになるのはまだ先です。
つまり、中国では『TSMC』に、
と反感を高めているというわけです。また、
といった点も懸念されるために反対しています。さらには投資金額です。
合衆国へ:120億ドル
(アリゾナ州で建設する)
※『TSMC』は3年間で1,000億ドルを合衆国に投資する予定です
『TSMC』は明らかに中国よりも合衆国を重視しているというのです。
ちなみにこの『TSMC』批判の震源地は、中国のIT専門家XiangLigangさんが「TSMCの南京拡張計画を中止せよ」と書いた記事。これがSNSで拡散され、盛り上がりました。
『TSMC』からすれば「知らんがな」という話なのですが、そもそも技術窃盗で有名な中国に最新設備の工場を建設するわけはありません。
面白いことに中国の国営『新華社通信』は、『TSMC』への反感について「半導体製造で中国が自立するまで忍耐が必要だ」となだめるような報道を行っています。薪の上に寝て、肝を舐めていつか……というわけですね。
(吉田ハンチング@dcp)