2023年02月02日、日本の林芳正外務大臣と中国の秦剛外交部部長(外務大臣に相当)の電話会談が行われました。
以下が中国外交部が出したプレスリリースの全文です。
2023年2月2日、秦剛外相は日本の林芳正外相と電話会談を行った。
秦剛は「中国と日本は近しい隣国であり、平和共存、友好、協力は双方にとって唯一の正しい選択である」と述べた。
「双方は歴史に学び、初志を貫徹し、妨害を排除し、軌道修正を行い、新しい時代の要請に応える中日関係を構築するために協力することが必要である」
今年は日中平和友好条約締結45周年であり、中国はこの機会に日本側と条約の精神を見直し、条約の義務を履行し、「相互パートナーシップと非脅迫」という重要な政治的コンセンサスを堅持し、ハイレベルな対話とコミュニケーションを維持し、デジタル経済、グリーン開発、生産・サプライチェーンの安定維持などの分野で協力を深め、中日関係の改善を正しい軌道で推進したいとしている。
我々は、日中関係の改善と発展を正しい道筋で推進していく。
秦剛外交部長官は「日本側が中国に対する客観的で理性的な認識を堅持し、歴史や台湾などの重大問題で約束を守り、言葉に注意し、軍事安全保障分野で慎重に行動し、釣魚島での右翼的挑発を止めることを望むと述べた。
我々は、日本が国際貿易ルールと自国の長期的利益を守る観点から、中国との経済・貿易・科学協力において市場原理と自由と開放の精神を維持し続けることを希望している。
双方は戦略的自律性を堅持し、より良いアジアの発展と構築のために協力し合うべきである。
中国と国際社会は、日本が核汚染水の海洋排出を一方的に決定したことに重大な懸念を抱いており、日本側がオープン、透明、科学的かつ安全な方法で効果的に処理することを望んでいる。
林外相は「日本と中国は互いを抜きにしては発展も繁栄もありえず、両国は協力の余地が広く、発展の大きな可能性を持っている」と述べた。
「日本は、日中平和友好条約締結45周年を、条約の精神を再確認し、両国首脳の重要な合意を履行し、あらゆるレベルでの対話とコミュニケーション、国民交流を強化し、実務協力を推進し、建設的で安定した日中関係を構築する契機として、中国と協力する意思がある」
日本側は、中国の国際社会への積極的な貢献を歓迎し、多くの分野で中国との協力を強化する意向を示した。
また、両者は共通の関心事について意見交換を行った。
⇒参照・引用元:『中国 外交部』公式サイト「2023年2月2日,外交部长秦刚同日本外相林芳正通电话」
※強調文字などは引用者による。
中国の秦剛外交部部長からは、上掲のとおり「お説教」と「(中国にとって有利であるように)日本はこうあるべき話」が披露されています。いい気なものだという他ありませんが、
「言葉に注意し」などと言っていますので、効いてるということでしょう。注目は「科学協力」、意訳すれば「技術をよこせ」と言及している点です。
アメリカ合衆国がオランダ、日本と半導体製造装置を中国に渡さない方向で合意したのが効いていることを示しています(合意内容は公開されていません)。
中国の半導体製造に大きな打撃となることは間違いありませんので、中国は「日本を合衆国に同調させない」ためにくさびを打ちたいのです。
日本からすれば「誰があんたの言うことなんか聞くものか」ですが、日本の林外相は合衆国から信用されていません。林さんを外相に据えたのは岸田文雄首相の大失策なのです。合衆国からすれば「林って……」という人選でした。
割にあっさりした中国のプレスリリースに対して、以下が日本の外務省が出したプレスリリースです。
2月2日、午後10時から約50分、林芳正外務大臣は、秦剛(しん・ごう)外交部長と電話会談を行ったところ、概要は以下のとおりです。
1 冒頭、秦剛部長から着任挨拶があり、林大臣から同部長に対して外交部長就任に対する祝意を述べました。
また、秦剛部長から、1月下旬に発生した長崎県男女群島西方沖における香港籍貨物船沈没事案等に対する日本側の捜索・救助活動に対し、謝意が表明されました。
さらに、林大臣から、両首脳間の重要な共通認識である「建設的かつ安定的な関係」の構築という大きな方向性の実現のため、秦剛部長と連携していきたい旨述べ、同部長から同様の考えが示されました。
2 林大臣から、日中関係は多くの課題・懸案に直面し、日本国内の対中世論は極めて厳しい旨述べつつ、尖閣諸島を巡る情勢を含む東シナ海、ロシアとの連携を含む中国の我が国周辺での軍事的活動の活発化、南シナ海、香港、新疆ウイグル自治区等の状況に対する深刻な懸念を改めて表明するとともに、台湾海峡の平和と安定の重要性につき述べました。
また、中国における邦人拘束事案等について、我が方の立場に基づき改めて申し入れました。さらに、日本産食品に対する輸入規制の早期撤廃を強く求めました。
3 また、林大臣から、昨年11月の首脳会談で一致した、グリーン経済や医療・介護・ヘルスケア分野での互恵的協力や、日中両国の未来を担う青少年交流を含む国民交流の重要性について述べつつ、そのためにも透明・予見可能かつ公平なビジネス環境の確保と日本企業の正当な経済活動の保障が重要である旨述べ、中国側の適切な対応を改めて強く要請しました。
4 両外相は、ウクライナ情勢について意見交換を行うとともに、拉致問題の即時解決を含む北朝鮮への対応について、引き続き緊密に連携していくことを確認しました。
また、日本は本年から安保理理事国であり、国連安保理においても意思疎通を強化していくことを確認しました。
さらに、中国が確立された国際ルールの下で国際社会に前向きな貢献を行うことの重要性について述べつつ、気候変動や開発金融といった国際的課題について、共に責任ある大国として行動していくことを確認しました。
5 両外相は、引き続き首脳・外相レベルを含めあらゆるレベルで緊密に意思疎通を行っていくことで一致しました。
⇒参照・引用元:『日本国 外務省』公式サイト「日中外相電話会談」
※強調文字などは引用者による。
さすがに外務省は、中国から「言葉に注意しろ」と言われたことなどについては触れていません。また、中国側が述べたとする「科学的な協力」についてはまるっとスルーしています。
「日本国内の対中世論は極めて厳しい」と述べたようですが、これで「日本政府が反中で動いてますよ」と伝わったのかどうかです。
邪推すれば、日本政府が合衆国と一緒になって反中国で動いているのを「世論のせいにした」ような発言にも見えます。
傑作なことに、中国というのは「なぜ日本政府は世論を統制しないのか」と平気で言う国ですので(本当です!)、「日本国内の反中世論を抑えるのは政府の仕事だろう」と真顔で返したかもしれません。
(吉田ハンチング@dcp)