日本メディアではあまり報道がされていませんが、『ソフトバンクグループ』「Vision Fund(ビジョンファンド)」の構想が根本から崩れてきたのではないかという話で、これを韓国メディアが報じています。
⇒参照:『亜州経済(韓国版)』「中国発ビジョンファンド第2次危機?…孫、DiDi『4.6兆損失』は始まりに過ぎない」
『ソフトバンクグループ』を率いる孫正義CEOが韓国系日本人ということで、韓国メディアは同グループの動向をよく報じます。
記事の元ネタになっているのは、他ならぬ「合衆国で中国企業株式への信頼性が揺らいでいる」という件について書いた、アメリカ合衆国メディア『Financial Times(フィナンシャル・タイムズ)』の、以下の記事です。
⇒参照:『Financial Times』「SoftBank Vision Fund’s bet on Didi falls $4bn into the red」
そもそも『ビジョンファンド』はIT関連の有望なスタートアップ企業に多く資金を投じてきたのですが、こと中国企業についてはその戦術が壁に突き当たったというのです。
例の『滴滴出行』(DiDi:ディディ)の件を指しています。以下のチャートをご覧ください(チャートは『Investing.com』より引用)。
2021年06月30日に上場した『ディディ』ですが、上掲のとおり株価は大きく下落しています。
これは、中国共産党の『国家互联网信息办公室』(国家インターネット情報弁公室)が『ディディ』のアプリを公開禁止にしたという事実を受けてのこと。中国企業について政治リスクが非常に高いことを示しています。
『ビジョンファンド』は『ディディ』に2019年、118億ドル(約1兆980億円)を投じています。約20%の支配権を持つ大株主ですが、「株式上場・暴落によって時価総額が約78億ドルとなったため、含み損を約40億ドル抱えた」――と『フィナンシャル・タイムズ』は報じています。
このように、中国共産党の政治リスクが露呈した現在、「中国のスタートアップ企業に資金を投じ、これを上場させることで莫大な含み益を得る」という戦術には見直しが必要なのではないのか――というわけです。
『ソフトバンクグループ』の戦術は変化するか
中国企業は、『ソフトバンクグループ』「ビジョンファンド」からの出資を受けることで、ある意味上場の形を整えるというメリットを享受してきました。合衆国市場に上場するということになれば、当然ながら「その企業の大株主は誰なんだ」と調査されます。「ビジョンファンド」が名前を連ねていればハクが付きます(国籍は日本企業です)。
つまり、「資金提供・上場」を考えれば、中国企業にとっても『ソフトバンクグループ』にとってもメリットがあり、両者はWin-Winの関係にあるわけです。
しかし、今回の『ディディ』の例で中国企業リスクがより明瞭になりました。果たして『ソフトバンクグループ』は中国企業を避けるようになるでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)