事実上の破綻で法定管理下にある韓国『双竜自動車』。
ソウル回生裁判所(破産処理ばかり専門に行う地方裁判所)は同社の再生に向けて、韓国の電気バスメーカー『エジソン・モータース』を中心とするコンソーシアムを優先売却先と指名したのですが、暗雲が漂っています。
もはや暗雲が漂うのも何回目だよ――ですが、とにかく「買収資金」が足らないのです。
何度もご紹介しているとおり、規模からいえば『エジソン・モータース』は『双竜自動車』よりはるかに小さな会社です。
そもそも『双竜自動車』を買収するための資金を用意できるのか、と懸念されていたわけですが、以下のような構想の下『産業銀行』が貸してくれると述べたことが大問題になったのです。
総額「1兆4,600~1兆6,400億ウォン」のうち、半分を『双竜自動車』の工場・土地を担保にして借りる予定だったのですが、これに『産業銀行』が激怒しました。
「買収資金というのは、買収してから借りるものではない、自己資金で用意しろ」というわけです。また、『エジソン・モータース』のカン・ヨンゴン会長が「『産業銀行』ならやってくれると信じる」などと『産業銀行』に圧力をかけるような発言をしたのも心証を悪くしました。
前置きが長くなりましたが、で――今回の話です。
2021年11月30日、『産業銀行』の李東杰(イ・ドンゴル)会長自身が、『エジソン・モータース』会長の「融資してくれるよね」発言に対する所感を述べました。
オンライン記者会見での李会長の発言を韓国メディアの記事から拾ってみます。以下をご覧ください。
「『エジソン・モータース』と『双竜自動車』の発展戦略を第三者の公的な信用のある機関が検証することが必要だ」
「電気自動車市場はグローバル完成車メーカーが存亡を懸けて競争する市場だ。『エジソン・モータース』は技術力と事業計画に自信を見せているが、市場では懸念を持たれている状況だ」
「(『双竜自動車』の工場や土地を担保とする件について:筆者注)担保は補完手段なだけで、企業の存続性と再生の可能性を見て支援を決める」
「(返済不能時に)私たちが土地を回収してアパートを建てて売るわけにはいかない」
⇒参照・引用元:『毎日経済』「『産業銀行』は「『エジソン・モータース』が資金の支援を臨むなら第三者検証を受けなければならない」
このように、『産業銀行』の李会長は『エジソン・モータース』の技術力・事業計画に不信感を持っています。また融資を受けたいのなら、第三者機関に認定されろと述べています。
『産業銀行』は国策銀行なので、あくまでも主眼は『双竜自動車』を生かすことにあります。ですから、単純に「担保を差し出すから金を貸してくれてもいいだろう」みたいな主張は通らないぞ、と明確に述べています。
事業が不首尾に終わったからといって、土地と工場を回収すればいい――なんて話ではないのです。
今回のオンライン取材の白眉は以下です。
『エジソン・モータース』のカン会長が(よせばいいのに)「『産業銀行』が融資してくれなくても、よその金融機関から資金調達が可能だ」とうそぶいたことについて、李会長は以下のように述べています。
「もしそれが可能なら、はるかに望ましいことだと思う」
李『産業銀行』会長の冷笑が見え……「フン!」と鼻を鳴らすのが聞こえるようだと思われませんか。
さて、『エジソン・モータース』が本当に『産業銀行』以外の金融機関から資金調達が行えるのかどうかにご注目ください。
(吉田ハンチング@dcp)