韓国『大韓航空』が資金調達のため非常に興味深い動きをしています。
2022年01月21日の「サムライ債」の発行を控え、2022年01月14日に投資家相手のプライシングを始めました。
「サムライ債」というのは、海外の発行体が日本で発行する日本円建ての債券です。簡単にいえば「円建ての外債」ですが、「日本=サムライ」というので、このような名称が使われています。
つまり、『大韓航空』が資金調達のために「円建ての債券を日本で発行する」のです。円建て、日本市場での発行ですから、当然これは日本の投資家向けのものになります。
規模は「300億円」で、主幹会社は『大和証券』と『みずほ銀行』。調達する資金は「02月に満期を迎える公募債で調達した資金の返済に充てる」とのこと。
つまり今回の発行は、借金を返済するための借金、ロールオーバー(借り換え)です。
満期は2年と3年で想定利率は「0.45%」としていますが、これは韓国市場で流通する『大韓航空』の社債2年物の金利より「約4%」も低い水準です。
つまり、韓国では「年利約4.45%」も利息を支払わないと債券が発行できないが、日本なら「年利0.45%」で発行できると読んでいるわけです。
つまり、韓国は2021年の第4四半期から金利が上昇しており、日本は世界的にも金利が異常に低い状態ですから、日本でお金を借りた方が利息払いが少なくて済むので「お得」なわけです。
それにしても、韓国より「4%」も低く設定しているのはなめた話のように思われます(もちろんYOSに何bp足すかという話ですけれども)。
問題は、これで日本の投資家がお金を出すのか?です。
Money1では何度もご紹介しているとおり、『大韓航空』は飛びそうになって事実上破綻した『アシアナ航空』と合併を進めている会社です。
しかも、この合併がうまくいく保証はありません。
昨日、国策銀行『産業銀行』が絵図を描いた『現代重工業』グループと『大宇造船海洋』の合併がEU当局の拒否によって頓挫したばかりです。
『大韓航空』と『アシアナ航空』の合併も、EU、アメリカ合衆国の当局が認可しないのではないかという懸念があるのです。
さらに、これが世界の全ての航空会社に当てはまりますが、コロナ禍が去ったとして、コロナ以前に航空旅客需要が戻るでしょうか?
コロナ禍の中、皆さんビジネスでもオンラインミーティングが普通になりました。それでもビジネスが一応回ることは、証明されています。よほどのことがない限り、現地には行かない、経費も削減できるし――と、少なくとも企業はそのようになるでしょう。
ですので、航空旅客需要は旧に復さないのではないでしょうか(ビジネス客が減るぶん観光客が増えれば別ですが)。
今回のサムライ債は満期が2年と3年です。3年先の『大韓航空』がどうなっているのか、本当に分かりません。「0.45%」の利息に見合うリスクでしょうか。
さて読者の皆さま、この『大韓航空』のサムライ債にどのくらいの需要があるのかにご注目ください。
あくまで個人の考えですが、筆者なら「他のもの」に張ります。
(吉田ハンチング@dcp)