2022年05月27日、韓国の「国民年金基金運用委員会」が会議を開催。韓国内株式の保有比率を現在の16.3%から2.3%引き下げて「14.0%」とすることを決定しました。
ポートフォリオで韓国株式の比率を下げるのです。
Money1をずっと読んでくださっている方は「!」と思われるかもしれません。「国民年金基金運用委員会」は、韓国の個人投資家からは怨嗟の的でした。
ポートフォリオに従って売らねばならない!
韓国の個人投資家が外国人投資家を憎むのは「お前らが売るから株価が上がらないんだ」というのが理由ですが、「国民年金基金」の方は「お前らが買わないから株価が上がらないんだ」と非難の声を投げつけられてきたのです。
まあ、この非難の声は無茶苦茶で、「国民年金基金」ではポートフォリオが決められているのです。つまり、大損しないように分散投資が行われており、国内株式には全運用時価総額の○%、外国株式には○%――といった具合になっています。
ですから、例えばその定められた%を超えたときには売らなければなりません。
2020年の後半から個人投資家の批判が殺到したのはこのためでした。
2020年03月に天底となったコロナ禍からの回復で、韓国でも株価が急騰し、個人投資家が大幅に増え株式ブームとなりました。
ところが、2020年の終わりから2021年の第3四半期にかけて「国民年金基金」は韓国株を連続で売り続けました。
驚くなかれ、2021年に入って09月16日までに22兆4,874億ウォンを売り越したのです。
個人投資家からは「お前らが買えばもっと上がるのに」「なぜ売るんだ」と非難が押し寄せました。
しかし、これは先にご紹介したとおりポートフォリオの制限による措置だったのです。
韓国株はもうからないので外国株にシフト
今回、「国民年金基金運用委員会」は、2027年までに韓国株の割合を14.0%まで引き下げるとしたのですが、一方で外国株の割合は現在の「28.0%」から「40.3%」に高めることに決定しました。
ただし、投資金額で見ると14.0%まで下げたとしても韓国株式の保有金額は現在の「164兆9,000億ウォン」から「192兆ウォン」まで増加します。なぜなら、(株価の上昇などがあって)国民年金基金自身の運用金額(分母)が増えているからです。
今回、「国民年金基金」がこのような決定をした背景は、端的にいって「早くもうけたい」からです。韓国株式よりも外国株式の方が収益性が高いのでそちらにお金を張った方がいいのです。
また、この年金基金が枯渇する時期が早まることが既定路線なことも大きな影響を与えています。
現在は「928兆ウォン」ありますが、人口が減って保険料徴収が少なくなってくるとこの基金から取り崩さないと老齢年金などの支給ができません。
先にご紹介したとおり、韓国は2020年に人口の資源減少フェーズに入り、出生率も回復しないことから急速に老いていきます。すると、予測していたよりも早く年金基金が枯渇するのです。
ですから、国民年金基金としては「早くもうけないといけない」、しかも「できるだけ多くもうけないといけない」のです。
これは時間との戦いでもあります。
また、韓国株式の保有量が余りに多いと「売却してお金に換える」ときに、国内市場に巨大な影響を与えてしまいます。ですから、外国株式にシフトしておくのです。韓国株式の保有を絞るというのには、そういう意図もあります。
東学アリと呼ばれる韓国の個人投資家の皆さんにとってはあまりいい話ではないかもしれません。しかし、国民年金基金としても、基金の枯渇を先送りするために必死なのです。
(吉田ハンチング@dcp)