韓国メディア記事に「双子の赤字」という言葉をよく見かけるようになりました。
例えば、2022年06月03日『ソウル経済』には「『双子の赤字』病の懸念、安易な姿勢では治癒困難」というタイトルの記事が出ています。
この場合の「双子の赤字」は、
②貿易収支の赤字
の2つを指しています。
「双子の赤字」といいますが……
①は韓国政府の財政の赤字です。
驚くなかれ、韓国政府の財政は2018年までは黒字だったのです。歳出は歳入よりも小さく健全だ、と誇っていました。
支出をやたらに膨らませたのが文在寅大統領です。
2019年に赤字転落しましたので、コロナのせいと主張することはできません。コロナで支出に歯止めが掛からなくなり、あれよあれよという間に政府支出が600兆ウォンを突破しました。当然、そんな財源はありませんので、赤字国債を乱発。政府負債も異常な速度で増えたのです。
2022年も財政赤字と見込まれていますので、韓国は4年連続の財政赤字となる予定です。
②は(本来)国際収支上の問題です。しかし、現在韓国メディアが騒いでいるのは通関ベースでの「貿易収支の赤字」です。
先にご紹介したとおり、関税庁、統計庁、産業通商資源部の通関ベースのデータによると、01~05月累積の貿易収支は「-78億4,200万ドル」と赤字です。
韓国メディアではこの双子の赤字がマズイと指摘していますが、貿易収支については、国際収支統計で赤字になってから本格的に騒ぐべきなのです。
もっとも、国際収支統計で貿易収支が赤字になったら、その時は「本当に韓国は危ない」のですが。
また、通関ベースとはいえ、貿易収支の黒字が減少したり、赤転するのは良くない傾向です。そのためMoney1でも発表があるたびに逐一ご紹介しています。
韓国はかつて「四つ子の赤字」だった!
しかし、韓国の場合には特に「双子の赤字」で驚くには当たらないのです。
若い読者の皆さんはご存じないかもしれませんのでご紹介しますが、かつて韓国は「四つ子の赤字」だったことがあります。
韓国通貨危機の直前には、
②貿易収支:赤字
③財政収支:赤字
④中央銀行:赤字
というものスゴイ状況となっていました。
①と②は国際収支統計です。念のために、以下に『韓国銀行』のECOSから切り出したデータを貼ってみます。
↑▲はマイナスの意味です。黄色でフォーカスしてあるのが、経常収支、貿易収支の赤字月です。こうして見ると2008年当時の韓国経済がいかにダメダメな状況だったかが分かります。
「国際収支統計で本当に貿易収支が赤字になったら……」というのはこのような過去があるためです。その時は間違いなく国が傾きます。
傑作なのは、当時中央銀行である『韓国銀行』まで赤字だったことです。
「なんでお札を印刷できる中央銀行が赤字になるんだ」と思われるかもしれませんが、これが韓国の「想像の上をいく」ところなのです。
「通貨安定証券」を発行し過ぎて、その利払いで赤転しました。2006年だけで「6兆8,000億ウォン」も利子払いを行っていました。
「世界唯一の赤字の中央銀行」といわれたのは、『韓国銀行』が世界でも類を見ない債券発行を行い、多額の利払いに苦しんでいたためです。
――というわけですので、韓国は確かに危なくなってきていますが、現在の「双子の赤字」程度ではまだ驚くに値しません。国際収支統計で貿易収支がもっと減少し、経常収支が赤転する可能性を見せだしたら……そのときこそ……なのです。
(柏ケミカル@dcp)