Money1でもご紹介しているとおり、とうとうドルウォンレートが一時「1ドル=1,300ウォン」を突破。
2020年03月、コロナ禍の中、ドル不足でドボン寸前になったときも日足の最高値は「1ドル=1,292.93ウォン」でした。
以下をご覧ください(チャートは『Investing.com』より引用:日足)。
過去のデータから見れば、すでに通貨危機レベルといってもいい水準なのです。このために韓国の金融当局はドタバタです。
尹錫悦(ユン・ソギョル)新政権で『金融監督院』院長となった李卜鉉(イ・ボクヒョン)さんは、
「全世界のバリューチェーンが複雑に絡み合っており、オイルショック時よりも大きなリスクが発生する可能性がある」
「それこそ未曾有のパーフェクトストームが押し寄せるかもしれない」
と危機感を露わにしています。
それにしても、『金融監督院』の院長になると、皆さんパーフェクトストームという表現が好きになるのでしょうか。
Money1でもご紹介しましたが(以下記事)、前文政権末期に『金融監督院』の院長になった鄭恩甫(チョン・ウンボ)さんも就任するなり「パーフェクトストームが来るかもしれない」と警告を発していました。
これで来なければ助かるのですが、どっこい韓国経済には暗雲が垂れ込めています。李卜鉉(イ・ボクヒョン)院長の言葉を報じた『毎日経済』の記事から一部を以下に引用します。
(前略)
韓国経済の危機信号が外国為替市場から出ている。ドルウォンの値が連日急落し、1,300ウォンが崩壊したのは韓国経済を支えてきた実物経済に赤信号がつき、このような懸念が外国為替市場に波及し、外国資本の離脱が可視化されているためだ。特に、政府がドルウォンレート1,300ウォン線を死守するためにさまざまな努力をしたことが知られており、マジノ線が崩壊したという危機感も生じている。
(後略)⇒参照・引用元:『毎日経済』「이복현 금감원장 “미증유 퍼펙트스톰 우려”」
確かに『韓国銀行』は外貨準備高を公表する資料において、為替介入を行った旨を記載していますが、韓国政府が何をしてきたのかは不明です。『毎日経済』の書きようでは、政府もさまざまな努力をされたそうです。残念なことに効き目はありませんでしたが。
……少なくともここまでは。
で、さまざまな努力をしたのに突破されたので「マジノ線が崩壊した」と認識され、危機感を生じさせている――と意見を述べています。
もう何度だっていいますが、「マジノ線」なとと呼ぶから破られるのではないでしょうか。
また出た!「米韓通貨スワップの締結」
また、懲りずに例の話も取り上げられています。
(後略)
専門家たちはウォン値1,300ウォンが崩壊しただけに、外国為替市場では1,350ウォン台が1次抵抗線になるだろうが、この水準を守れるかどうか見守らなければならない、と警戒感を露わにした。また、外国為替市場の安定のために米韓通貨スワップを早急に締結することを促した。
(後略)⇒参照・引用元:『毎日経済』「이복현 금감원장 “미증유 퍼펙트스톰 우려”」
「米韓通貨スワップを早急に締結すべき」という、どうやって実現すればいいのか分からない提言も出ています。
「外国為替市場の安定のために米韓通貨スワップを早急に締結することを促した」という書き方もヘンです。
「促した」というのは、韓国政府、あるいは『韓国銀行』に、なのでしょうが、先のバイデン大統領訪韓のときに分かったようにアメリカ合衆国は(少なくとも)現時点において、韓国とドル流動性スワップ(韓国側呼称「通貨スワップ」)を締結するつもりはありません。
『韓国銀行』の李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁が述べたとおり、「ドル流動性スワップは合衆国の連銀に主導権があり、連銀が必要と認めなければ締結できない」のです。
もう何度だって言いますが、現在、『FRB』(Federal Reserve Boardの略:連邦準備制度理事会)はインフレ対策のため「流動性を絞ろう」と努力しています。
通貨の価値を上げるためです。
その最中に、なぜ流動性を高めるためのドル流動性スワップを他国と締結する必要があるのでしょうか。
2020年03月に『FRB』が、連銀と9カ国の中央銀行の間で緊急のスワップラインを締結したのは、世界的なドル不足で合衆国の金融システムまでダメージを受けると判断したからです。特に韓国を助けるためのものではありませんでした。
コロナ禍の流動性不足が解消されたので、緊急で作ったスワップラインは終了したのです。もととも『FRB』は「temporary」(一時的・仮の・臨時の)としていましたので終わって当然なのです。
それを「韓国と合衆国は血盟なので……」などと言い募るのがヘンなのです。
さらにいえば、未曾有の危機が来ると金融監督院が言っているときに、その解決策が外国頼み(アメリカ合衆国にドルを借りる契約)というのはいかがなものでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)