韓国では、2022年08月16日に成立したアメリカ合衆国の「インフレ削減法」についての懸念が高まっています。
「韓国産の電気自動車が売れなくなる」嫌な未来予測
合衆国産の電気自動車と認定されなければ「補助金が出ない」(正確には税額控除が受けられない)という法律だからです。合衆国エネルギー省が公表したリストには韓国産の電気自動車は一車種も入っていませんでした(以下参照)。
↑税額控除適用と認定された車種。日本メーカーでは『日産自動車』の「リーフ」が入っています。⇒参照・引用元:『アメリカ合衆国 エネルギー省』公式サイト「Inflation Reduction Act of 2022」/スクリーンショット
韓国政府、また『現代自動車』『起亜自動車』は電気自動車を主力輸出品と誇ってきましたので、ここで合衆国政府から補助金が受けられないとなると、価格戦闘力を失い売れなくなると予想されます。
韓国産自動車の対合衆国輸出金額が膨らんだのは、単価の高い電気自動車・SUVが販売好調だったからです。
単価の高いものが売れた理由はもちろん補助金があったため。これが切れるのは大変困るわけです。
世界第1位の自動車市場である中国を失い、ウクライナ戦争によってロシア市場がダメになった韓国としては、世界第2位の合衆国市場で売上を下げるわけにはいきません。
世界第3位の日本市場でさっぱり売れませんし。
そのため、何がなんでも韓国産の電気自動車に合衆国政府からの税額控除が受けられるようにしなければならないのです。
外交部が対策会議を開くが……
――というわけで、韓国の外交部が合衆国との交渉について、2022年09月2日、「どーしたものか」と急遽対策会議を開催しました。
以下はそのプレスリリースです。
□外交部は09月02日(金)李度勲(イ・ドフン)第2次官主宰で合衆国「インフレ削減法(Inflation Reduction Act)」対応関連の対策会議を開催した。
○同会議では、政府合同代表団の防米(08月29~31日)など、これまでに行われた合衆国との協議の結果および評価に基づき、韓国業界保護のための対策および議会との接触など、今後の対応方向を議論した。
□外交部は、今後も関係省庁および関連業界と緊密にコミュニケーションを取る中で、韓国企業が差別的な扱いを受けないように解決策を設けるため、合衆国側と緊密に協議していく予定だ。
添付:対策会の写真。終わり。
⇒参照・引用元:『韓国 外交部』公式サイト「李度勲第2次官 米『インフレ削減法』対応対策会の開催」
先にご紹介しましたが、韓国与野党議員らが合衆国の国務省高官らと面談したのですが、傑作なことに「法律は議会が成立させるものなので、うちらに言っても仕方ないですよ」と門前払いされました(以下記事)。
簡単にいえば言い訳です。しかし、上掲のとおり、韓国の外交部は「議会との接触」を模索するそうです。
2022年09月05日の週には、安徳根(アン・ドククン)通商交渉本部長が渡米。09月中には李度勲(イ・ドフン)第2次官がワシントンD.C.を訪問する予定です。
段々、前文政権末期の「鉄鋼・アルミニウム輸入制限の再交渉」問題みたいになってきました。
あのときも、産業通商資源部の幹部が相次いで渡米しましたが、さっぱり成果が出せず「門前払い」が続きました(例えば以下の記事でご紹介しました)。
結局、この再交渉問題もその後フェードアウトしていきました。どうにもならなかったのです。今回の「インフレ削減法」についてもこのパターンにならないといいのですが……。
例の会長が「ワシが討って出る!」
面白いのは、『全国経済人連合会』から「許昌秀(ホ・チャンス)会長が討って出る」というリリースが出ていることです。
↑Googleの自動翻訳なので日本語がヘンなところがありますがご寛恕ください。許昌秀(ホ・チャンス)『全国経済人連合会』会長は、合衆国バイデン大統領に「インフレ削減法(IRA:Inflation Reduction Act)」の通過(8.16、米現地時刻基準)と関連して、韓国自動車業界の被害が予測されることに憂慮を表明すると共に、差別的措置の免除を要請する書簡を送付した。
(後略)⇒参照・引用元:『全国経済人連合会』「許昌秀(ホ・チャンス)会長、バイデン大統領に「韓企業に差別的なインフレ削減法免除要請」
この許昌秀(ホ・チャンス)会長は、Money1的には有名人です。スキあらば「日韓通貨スワップ」を連呼する人だからです(例えば以下の記事)。
許昌秀(ホ・チャンス)会長からバイデン大統領に「韓国産電気自動車に差別的扱いをしないように求める書簡」を出したとのこと。
韓国のエライ人はなぜだか分かりませんが「ボス交渉」が大好きです。
「ワシが討って出て向こうの大将と話をつければ全てうまくいく」と思い込んでいます。全ての権限が集中した大統領制の弊害かもしれませんし、権力の分散、民主主義に対する理解が少ないからかもしれません。
この書簡もまたその思い込みの産物です。確かにないよりはいいでしょうが、そんなことでうまくいくなら、それこそ尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領がバイデン大統領との直談判に臨むべきです。
もっとも、直談判が実現したところでバイデン大統領から「法律は議会が決めることなんで知らん」とかわされるかもしれませんが(バイデン政権には手練の韓国通がそろっています)。
韓国政府も必死なので、何か吉報があるといいのですね。
(吉田ハンチング@dcp)