EU vs 中国 「中国は“ルールに基づく秩序”を破壊する」

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2023年12月13日、欧州議会は「EUと中国の関係」勧告を採択しました。これは、中国を「ルールに基づく秩序を破壊する者」として位置づけ、中国に対抗する手段を取らなければならない――と述べた勧告です。この勧告は、

賛成:529票
反対:47票
棄権:40票

の賛成圧倒的多数で採択されました。

⇒参照・引用元:『欧州議会』公式サイト「The EU must respond to Chinese efforts to change the rules-based order(EUは、ルールに基づく秩序を変えようとする中国の努力に対応しなければならない)」

あまりに長文ですので、全てを和訳することはいたしませんが、中国の世界に覇を唱えるような姿勢を全面否定しています。例えば、以下のような具合です。

それでも長文ですが、斜め読みで結構ですのでご覧ください。

(前略)
A.中華人民共和国(PRC)はEUにとってパートナーであると同時に、ますます競争相手であり、体系的なライバルでもある。

中国は自らの意思で、明らかに我々の関係の核心を体系的なライバル関係へとシフトさせている;

EUの政策は、可能な場合には協力し、必要な場合には競争し、必要な場合には対決するという原則に導かれてきたし、今後もそうあるべきである。

中国が急速に地域的、世界的に支配的な大国となりつつある。このことは、世界経済におけるEUの役割とEUの安全保障に根本的な影響を及ぼす;

B.中国政府は国際機関における役割と影響力を強化しつつあり、国際的なルールに基づく秩序を再構築する意図と同時に、経済的、技術的、軍事的手段も有している

(中略)

D.中国共産党は、欧州の民主主義国家と同じ価値観を共有しておらず、国内的には権威主義を強めており、国際的にはEUの価値観に反する統治モデルを推進している;

人権、民主主義、法の支配の促進と保護は、対外行動のあらゆる分野においてこれらの基本原則を支持するというEUのコミットメントに沿って、EUと中国の関係の中心にあり続けるべきである;

E.中国共産党は、香港とマカオの特別行政区の統治に関する中英共同宣言と中ポルトガル共同宣言に署名し、「一国二制度」の原則を約束した;

中国が2020年06月30日に国家安全法(NSL)を発動して以来、香港の基本的自由、法の支配、司法の独立は驚くほど悪化している。中国は「一国二制度」の原則、中英・中葡共同宣言、市民的及び政治的権利に関する国際規約に完全に違反している

F.中国は、軍事演習、経済的強制、サイバー戦争、情報操作を含むグレーゾーン活動を採用し、ますます主張的な経済・外交政策によって特徴づけられる安全保障と管理の新時代に移行しつつあり、国際ルールに基づく秩序を変えようとしている

(中略)

H.欧州は、その中核的価値を守り、対等なパートナーとして扱われるために、欧州の開かれた戦略的自治、相互主義、志を同じくするパートナーとの協力に基づき、強制から自らを守るために必要な立法的および非立法的手段に裏打ちされた、中国に対する新たなアプローチを必要としている

I.EUは、ウクライナに対するロシアの違法な侵略戦争に対する中国による批判的な政治的・軍事的支援を受け入れてはならない。

中国は、ウクライナへのロシアの侵攻を本格的な侵略戦争としていまだに認めておらず、EUがロシアに対して課している制裁の回避と緩和において重要な役割を果たしている;

(中略)

EUは、台湾海峡におけるいかなる一方的な現状変更、特に武力による現状変更に反対し、中国によるそのような企てに対する抑止力の強化においてパートナーと協力しなければならない。

EUは、挑発的な軍事行動、経済的強制、サイバー攻撃などのグレーゾーン活動に懸念を抱いており、中国国内、特に新疆ウイグル自治区、チベット、内モンゴル自治区、香港・マカオで現在進行中の重大な人権侵害に反対し、人権侵害に直面している人々と連帯しなければならない;

L.EUと中国は2018年、グローバルな海洋ガバナンスに関する協力の改善を目的とする「ブルー・パートナーシップ」として知られる二国間協定に署名した;

M.中華人民共和国全国人民代表大会常務委員会は、海上交通法を改正し(海上交通法改正2021)、2021年9月1日から施行されているのに対し、南シナ海における中国の拡張主義的な政策と嫌がらせを構成する行動は、UNCLOSと航行の自由に対する明白な無視を示している;

南シナ海と東シナ海の係争地域を支配しようとする中国の一方的な努力は容認できない。

中国天然資源省はいわゆる標準地図を発表した;

ここ数十年、中国はほとんどすべてのアフリカ諸国で存在感を高めており、中国はこれを国際的影響力を高め、経済的利益、特にアフリカの膨大な天然資源と巨大市場へのアクセスを確保するために利用している

中国政府はますます抑圧的な国内政策を実施しており、あらゆる形態の反対意見を抑圧し、あらゆる市民的・政治的自由を取り締まり、チベット人やウイグル人などの民族的・宗教的少数派を特に厳しく標的にしている;

国連拷問禁止委員会および拷問およびその他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは刑罰に関する国連特別報告者は、囚人からの臓器強制摘出の疑惑に懸念を表明し、中国政府に対し、臓器移植制度の説明責任と透明性を高め、虐待の責任者を処罰するよう求めている;
(後略)

EUが中国の言動を全面否定しているのがお分かりいただけるでしょう。

中国の愚にもつかない反論

このEUの勧告採択に対して、中国共産党の英語版御用新聞『Global Times』がさっそく怒りの記事を出しています。以下のような具合です。

中国駐EU代表部は木曜日、EUの報告書は偏見と嘘に満ちており、中国の内政に干渉していると厳しく批判するとともに、EUに対し、無責任な発言をやめ、中国とEUの関係の発展にもっと貢献するよう促した。

「EUの報告書は中国の主権を著しく侵害し、中国の内政に干渉し、国際関係を支配する基本的規範とEUの政治的公約に違反している」と、駐EU中国代表部の報道官は木曜日に発表された声明の中で述べた。

(中略)

欧州議会のウェブサイトに掲載された文章によると、報告書はEUに対し、「欧州の開かれた戦略的自律性を確保するため、中国からのリスクを取り除く」よう勧告した。

同報道官は、「一方では、中国をEUのパートナーとみなすEUの関連報告書と決議、他方では、中国とEUの間のイデオロギーと価値観の相違を大幅に誇張し、双方を制度上のライバルとして強調し、中国が率先して中国とEUの関係の核心を制度上のライバルに移行させたとさえ虚偽の主張をしている」と述べた。
(後略)

⇒参照・引用元:『Global Times』「China rebukes EU report for ‘prejudices, lies, interference in Chinese internal affairs’」

御用新聞は「EUはウソを言っている」と非難していますが、上掲のとおり、欧州議会の勧告は極めて真っ当な批判しかしておりません。

EU・中国の反応を見れば明らかなとおり、自由主義陣営国と中国が妥協できるわけはないのです。中国は周囲からタコ殴りしないと理解しません。結論はいつも同じです。清朝のときのようにみんなで瓦解させるしかないのです。

(吉田ハンチング@dcp)

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