2024年09月18日、中国・深センで日本人学校に通う10歳の少年が、44歳の中国人に刺殺され死亡するという、許しがたいヘイトクラムが起こりました。
世界的にもこの事件は注目されており、はっきりいえば日本メディアよりも外信の舌鋒の方が鋭いです。09月20日に行われた中国外交部の定例記者会見では、本件についての質問が多数出ました。
以下に、本件に関わるところを全て引用します。
『Bloomberg』記者:
水曜日に深センで発生した事件について、日本側は昨日、孫偉東外務次官と日本大使の電話会談のニュースを発表し、その中で孫偉東外務次官が「これは孤立した事件であり、容疑者は前科がある」と述べたと伝えた。しかし、これは犯罪の動機を示すものではない。
今朝、中国日本大使館からメールを受け取り、日本側は依然として中国側に事件の詳細を公表するよう強く要求している。容疑者は現在、2日以上勾留されています。動機についての情報は提供できますか?
毛寧:
この問題について、中国と日本は意思疎通を行っています。昨日、孫偉東副大臣は金杉憲治大使との電話会談で関連情報を提供しました。
また、深セン市も多くの情報を提供しています。
私の知る限り、中国の関連当局がこの事件を調査・処理しています。
動機を含め、事件の進展状況に関する具体的な情報については、中国の関連当局にお問い合わせください。
『日本経済新聞』記者:
今年06月に蘇州で発生した日本人母子と中国人女性に対する襲撃事件について、昨日の報道官の発表では「現在も引き続き調査中」とのことだった。06月以降の進展について教えてほしい。
中国に在住する日本人は、深センと蘇州で発生した2つの事件について非常に心配している。中国は、この2つの事件の調査が完了した後、動機や背景、犯罪の状況など詳細を発表する用意があるのか?
毛寧:
私の知る限り、中国当局が関連事件の調査と処理を行っており、今後、順次、司法手続きを進めていくことになる。現時点で、具体的な進展や、あなたが懸念している情報については承知していないので、中国当局に問い合わせていただきたい。
『NHK』記者:
日中間の合意のニュースは、深センで日本人が刺殺された事件と非常に近い時期に発表されました。この2つの間に何らかの関係があるのでしょうか?毛寧:
日中間の合意の内容と発表時期は双方の綿密な協議を経て決定されたものです。深センで発生した日本人が襲われた事件については、中国側はすでに何度も立場を表明しています。この2つの間に関連性はありません。
『Bloomberg』記者:
昨日、深セン市公安局に犯人の動機について尋ねたが、回答は得られなかった。孫偉東次官は昨日、日本大使と会談した際に、容疑者の前科など詳細について言及した。このことから、日本政府との連絡窓口は外務省であると思われる。
あなたは先ほど、私が中国の主管当局に問い合わせるよう提案した。主管当局は外務省であると理解している。そこで再度お尋ねしたいが、犯人の動機は何だったのか? なぜ事件に関する情報が提供されなかったのか?
毛寧:
この事件は公安機関が捜査中であり、捜査の過程にあり、結論が出ていないということだ。日中両国の外交部門は連絡を取り合っている。これは必要かつ正常なことだ。あなたが懸念している問題について、主管部門はより権威ある情報を提供できる。
『共同通信』記者:
深センのメディアは本日、深センの日本人学校の事件は孤立した事件であると報道した。中国側のコメントは?毛寧:
メディアの報道と深センの状況については承知している。事実に基づいた報道であると信じている。『NHK』記者:
深センの事件について再度お伺いします。日本側が最も知りたいのは、犯人が日本人を狙ったのかどうかです。中国外務省としてどうお考えでしょうか?毛寧:
この問題について、日本側および在中国日本人の懸念は理解できます。容疑者はすでに公安当局により刑事拘留されています。具体的な動機については、慎重な調査により確定する必要があり、現時点で私は関連情報を持ち合わせていません。『Bloomberg』記者:
動機が不明であるならば、なぜこれが孤立した事件であると断言できるのか? 動機が不明であると述べる一方で、これが孤立した事件であると述べています。 矛盾しているのではないでしょうか?毛寧:
容疑者の動機を除いて、事件が孤立したものであるかどうかを判断するには、多くの要因があります。これまでの情報から判断すると、これは孤立した事件です。しかし、具体的な状況については、捜査が完了するまで待たなければなりません。
焦点は犯人の動機! 中国当局は「日本人だから襲った」と確定されたくない
犯人の動機はなんだったのか、明らかにしろ――と、『Bloomberg』の記者が執拗に迫っています。また『NHK』 の記者も「日本人が最も知りたいのは日本人だから殺されたのか」という点だと糾弾しています。
まさに焦点はココです。
2024年06月に蘇州の日本人学校の生徒が襲撃され、それをかばった中国人女性が亡くなりました。今回の深センの事件で2回目で、これらは日本人を標的にしたヘイトクライムです。
日本人はピンとこないところがありますが、アメリカ合衆国はじめ自由民主主義国では、ヘイトクライムに対して非常に敏感です。
犯人の動機が「日本人なら誰でもよかった。日本人を殺したかった」というものなら、これはヘイトクライムで世界的にも確定です(現時点でもヘイトクライムです)。
外信記者としてはウラを取るために、また確定させるためにも犯人が動機をどう語ったのか――を明らかにしたいのです。
対して、中国外交部の報道官は明らかにすることができません。
先にご紹介したとおり、中国外交部はこのヘイトクライムを「個別の案件であり、このような事件はどの国でも起こる」と許しがたい言説で逃げています。
「どの国でも起こること」ではありません。起こるのは反日国家・中国だけです。
このような「中国政府は関知せず」という態度に対して、『Bloomberg』記者は、
「犯人の動機が明らかになっていない、と言うのに、なぜ個別の案件だ、などと断言できるんだ。矛盾してるじゃないか」
と突きました。
毛寧報道官は「主管当局に聞いてみてください」なとど逃げようとしましたが、『Bloomberg』の記者は「主管当局は外交部じゃないか」と指摘。
中国外交部は、06月蘇州の事件についてもいまだ犯人の動機や背景について明らかにしていません。中国が「日本人少年を誰でもいいから殺害しようとする人民がいる国」であることがばれたら困るからです。
「日中間の水産物対中輸出緩和合意」は関係あるのか?
また、ご注目いただきたいのは、『NHK』記者による「日中間の合意のニュースは、深センで日本人が刺殺された事件と非常に近い時期に発表されました。この2つの間に何らかの関係があるのでしょう」という質問です。
2024年09月20日、中国は福島処理水の放出によって実施した「日本からの海洋水産物の全面禁輸」を緩和すると公表。これが10歳のの日本人少年が刺殺されたことへの補償だでもというのか――です。
毛寧報道官は「この2つの間に関連性はありません」と断言しましたが、「果たしてそうでしょうか?」です。
中国外交部が日本の外務省に対して「本件はこれでなんとか収めてくれないか」となめた態度で懐柔した可能性は捨てきれないでしょう。本件は日本の外務省を追求する必要があります。10歳の少年の死を取引したのか?と。
(吉田ハンチング@dcp)