あまりの下落に頭にきたのか、先の記事でご紹介したとおり、韓国株式市場では2020年03月11日(火)より「空売り」に関する規制が強まります。
株式やFXの取引をされない方にとっては分かりにくいかもしれませんが、「空売り」というのは相場が値を下げている局面でも利益を出せる取引の方法です。
例えば株式の場合、通常ならA株を買い、値が上がったら売ります。その差額が利益になるわけです。しかし、まずA株を売ることから入って、値が下がったら買うという売買を行います。この場合でも、「買い」と「売り」の差額分が利益になります。これが「空売り」です。
※上掲チャートは『Kabuステーション』より引用/上掲はあくまでも売買の例です
なぜ自分が持っていない株式を売れるかというと、証券会社から借りることができるからです。その代わり、貸株代金と手数料が余計に取られるのです。このようなコストを負っても空売りによって利益を出すことができるのが、相場の下落局面というわけです。ですから、相場が大きく下落する局面では「空売り」を行う投資家も増加するのです。
落ちることが分かっていれば、その方が儲かりますからね。
韓国はかつて株式市場での「空売り」を全面的に禁止したことがあります。今回の「空売り禁止銘柄」の指定要件を緩める、というようなものではなく「全銘柄での空売り禁止」です。
・2008年10月01日-2009年05月31日の8カ月間
・2011年08月11日-11月09日の3カ月間
上記期間は、全銘柄が空売り禁止でした。
では、この禁止措置は効果があったでしょうか? KOSPI(韓国総合株価指数)の月足チャート(ローソク足1本が1カ間の値動きを示します)で確認してみましょう。以下をご覧ください(チャートは『Investing.com』より引用)。
赤く四角で囲ってあるのが上記の空売り全面禁止期間に当たります。驚くべきことに、空売りを全面禁止にしたにもかかわらず、どちらの期間でも、初月は株価が大幅に下落しているのです。
この理由についてはいくつもの解釈ができます。まず、当局が空売り全面禁止の通達を出すということは、当局自身が「ファンダメンタルズが悪い」と認めたということであり、これが「持っていても仕方がない。今のうちに売ってしまおう」という投資家心理を呼んだのではないか、という見方。
また、空売りが禁止されるとそのぶん流動性が阻害されます。上記のとおり、空売りというのはよそから株式を借りてきて利益を出すという行為です。見方を換えると、資産を回転させて利益を生み出しているともいえます。これが阻害されると、株式の下落局面では株式を保有しておくバリューが小さくなるため、それが売りを呼ぶという見方。
いずれにせよ、過去に空売りを全面禁止した期間の実績を見ると、「それほど効果があっただろうか?」と疑問を持たざるを得ないのではないでしょうか? 今回の規制強化についても3カ月たったら検証してみましょう。
重要な追記その02
「空売規制強化」初日の市場が締まりましたので、以下の記事を制作しました。アナリストの皆さんは「だから、言ったじゃないか」というかもしれません。本記事と併せてお読み頂ければ幸いです。
追記
空売り規制を「明日から実施だ!」の、その明日になりまして、2020年03月11日(水)が開場しています。10:37現在のKOSPI(韓国総合株価指数)の状況を以下の記事にまとめました。初動段階では、ちょっと……皮肉なプライスアクションになっています。
(柏ケミカル@dcp)